町内資源の可能性求め 住田食材研究会が「メープルエール」開発 イタヤカエデの樹液を活用

▲ 住田食材研究会がメープルエールを開発

 住田町の住田食材研究会(及川喜悦会長、会員6人)は、町内にあるイタヤカエデから採取した樹液を使ったビール「メープルエール」を開発・製品化した。豊富な未利用資源を活用して特産品を作ろうとの試み。町内で5日夜、オンライン試飲会が開かれ、町内外の参加者から好評を得た。本年度は販売までには至らなかったが、今後も試飲会を行いつつ、事業の採算性・可能性などを見極めながら商品化への道や地域資源の活用策を探っていく。

 

オンライン試飲会を開催

 

 同研究会は、住田食材の魅力と気仙川をはじめとする豊かな景観を発掘、発信して町を元気にしようと平成24年度に設立。地元食材を使った料理の開発、川の景観を活用する川床の試作などに取り組んでいる。
 5、6年ほど前からは、町内に豊富に存在するイタヤカエデを使い、メープルシロップの製造にも着手。シロップを作るには樹液を40分の1ほどにまで煮詰める必要があるため、同研究会では「なんとか100%使える方法はないか」と考え、ビールに着目し、昨年から取り組みを開始した。
 イタヤカエデの樹液は、2月上旬から3月上旬にかけての1カ月間採取でき、1本の木から20〜30㍑程度の採取が見込まれる。ドリルを使って木に深さ3㌢ほどの穴を空け、ホースとポリタンクをつないで放置することで少しずつ樹液がたまっていくが、穴は自然にふさがるため木へのダメージも少なく、「持続可能」な取り組みにもつながる。
 同研究会では、今年2月に採取した樹液を一関市の「世嬉の一酒造」に持ち込み、ビール製造を委託。同6月ごろ、待望の製品化を果たした。
 製品化に精力的に励んできた同研究会の吉田洋一副会長(71)=下有住、事務局の藤井洋治さん(72)は「フルーティーで飲みやすい」「いいものができた」と太鼓判を押す。

町内でオンライン試飲会も開かれた

 試飲会は新型コロナウイルス感染拡大の影響によって見合わせてきたが、5日夜にオンラインで開催。吉田副会長や藤井さんを含め、町内外の約10人が参加した。

 画面越しに乾杯したあと、同研究会の活動やメープルエールの製造過程を紹介。意見交換会では、メープルエールを口にした参加者から「苦みが少なく、甘みと酸味があっておもしろい。例えるなら、ラムネ菓子みたい」「独特な甘みの中にさわやかさがあっておいしい」「若い女性が好きな味ではないか」といった声が上がった。
 また「ビールは造った土地で、そこの気候と料理で飲むのが一番」といった意見もあり、「コロナが落ち着いたら、種山で星空を見ながら試飲会をやれたら」といったアイデアが寄せられ、飲み心地だけでなく、資源活用の可能性についても語り合った。