藻場回復へ対策学ぶ 「磯焼け」で消失域拡大 広田湾 漁業者対象に市が勉強会
令和3年12月11日付 7面

陸前高田市は9日、広田町の県立野外活動センターで磯焼け対策の勉強会を開いた。広田湾では近年、藻場が減る「磯焼け」を背景に海藻を餌とするアワビなどの資源不足が課題となっており、漁業者が抜本的な対策を探るため全国の状況や対策の先進事例などを学んだ。
広田湾漁協の組合員ら約50人が参加。勉強会は2部構成で、第1部では水産土木建設技術センター(東京都)調査研究部の主任研究員・完山暢氏(39)が「磯焼けの現状と対策」をテーマに講話した。
完山氏は、藻場の定義や磯焼けの発生原因に加え、対策を講じるための基本的な考え方、対策の事例を説明。発生原因の一つにウニなどによる食害を挙げ、「藻場礁の整備などのハードとウニ除去などのソフトの両方を連携して行うべき。藻場回復のため根気強く対策を行うことが大切だ」と強調し、継続して実施するための人員体制構築の重要性、市民ボランティアの協力を得た事例も伝えた。
第2部では、㈱アルファ水工コンサルタンツ東京本社参事・綿貫啓氏(67)が、震災前後の広田湾海水温の推移、藻場拡大に向けた県の取り組みを紹介した。
そのうえで、ウニ除去の効果的な方法として「浅場の天然岩盤には海藻が残っており、そうした場所を『核藻場』にして、背の高い岩盤周辺のウニを除去していけば藻場を拡大できる」と述べ、取り除いたウニの活用事例にも触れた。
県が3月にまとめた「藻場保全・創造方針」によると、陸前高田市の藻場面積は東日本大震災前(平成17〜23年平均)290㌶だったのに対し、昨年は41㌶と消失域が拡大。消失率は85・9%で、本県沿岸市町村で最大だった。広田湾漁協は昨年まで2年間、資源不足を理由に広田、小友の2地区のアワビ漁を見合わせた。
こうした状況を受け、同漁協の市藻場再生活動組織(鈴木和男代表)や高田高、㈱橋野潜建は本年度海中のモニタリング調査を開始。ウニの除去などにも取り組んでいる。
勉強会に参加した鈴木代表(66)=広田町=は「ウニ除去のポイントなどを説明してもらい、非常に参考になった。なかなか成果を上げるのが難しいが、若い世代のためにも藻場の再生を図る必要がある。どのようにできるか今後も検討が必要だ」と話した。