巨匠・ギトリス氏の冥福祈る 気仙ゆかりのバイオリニスト 弟子の木野さんら市内で演奏

▲ 奇跡の一本松の前でバイオリンを奏でる木野さん

 東日本大震災後の復興支援に対する感謝と、昨年12月に亡くなった世界的バイオリニスト、イヴリー・ギトリス氏への追悼の意を表す「いわて復興の絆コンサート」(県主催)は18日、陸前高田市高田町の市民文化会館・奇跡の一本松ホールで開かれた。気仙を訪れたことがあるギトリス氏の弟子で、日本フィルハーモニー交響楽団のソロ・コンサートマスターを務める木野雅之さん(58)=東京都=も出演。木野さんは、前日17日に気仙町の奇跡の一本松前でもバイオリンを演奏し、ギトリス氏や震災犠牲者の冥福を祈る安らぎの音色を響かせた。
 ギトリス氏はイスラエル出身。パリ音楽院を首席で卒業し、超絶技巧の天才奏者として世界的に高い評価を受けた。
 震災後は本県などの被災地に足を運び、同市で合同慰霊祭が行われた平成24年には奇跡の一本松の前で演奏。昨年12月24日、98歳で亡くなり、音楽界のみならず多くの人に惜しまれた。
 コンサートは、震災から10年の節目に合わせ、継続的に被災地支援活動を行ったギトリス氏への哀悼の意と、復興支援への感謝のメッセージを国内外に発信しようと開かれた。本県の被災地で慈善演奏を展開するバイオリニスト・木野さんをはじめ、ギトリス氏にゆかりのある7人の演奏家が出演。市民ら約300人が来場した中、人情あふれるギトリス氏とのエピソードを振り返りつつ、クラシック曲などを演奏して故人をしのんだ。
 コンサート前日の17日には、木野さんが同コンサート出演者の大鼓奏者・大倉正之助さん(66)=東京都=とともに高田松原津波復興祈念公園を訪問。献花のあと、奇跡の一本松へ移動した木野さんはバイオリンで『G線上のアリア』を奏で、さざ波の音と溶け合うような優しい音色を公園内に響かせた。
 木野さんは「震災から10年。一つ一つ着実に前に向かい、新しい歴史をつくっていこうという地域の方々の強い思いをここへ来て感じた。自分の音には先生(ギトリス氏)の魂が息づいていて、きょうの演奏もきっと聞いてくれていたと思う。人の記憶に残る音をこれからも奏でていきたい」と話していた。