東日本大震災10年/半数超が「帰郷予定なし」 県の避難者実態調査 「戻りたい」は1割に

 県は、東日本大震災津波にかかる「令和3年度県外および県内避難者実態調査」の結果をまとめ、公表した。「県内、避難元市町村への帰郷予定」について、「帰郷予定なし(定住予定)」の割合が半数を超えた一方、「5年以内に帰郷する具体的な予定がある」「いずれは帰郷したいが、当面は考えていない」を合わせた割合は1割余りにとどまったことが分かった。
 同調査は、震災にかかる県外、県内他市町村への避難者の実態を把握し、帰郷意向などを確認するとともに、今後の支援方策に活用するのが目的。元年度以来2年ぶりの調査は今年7~10月、県のいわて被災者センター(釜石市)が郵送で行った。
 調査項目は、県内や避難元市町村への帰郷予定、今の生活で困っていることなど全10問。前回調査で「帰郷予定なし」「帰郷済み」と回答した世帯を除く1073世帯(県外435世帯、県内他市町村638世帯)を対象とし、57・8%に当たる620世帯(県外227世帯、県内393世帯)が答えた。回答世帯が被災時に居住していた地域は、大船渡市が70世帯、陸前高田市が111世帯。
 「県内、避難元市町村への帰郷予定」の問いに対し、最も多かったのは「帰郷予定なし(定住予定)」の359世帯(57・9%)で、県外は123世帯(54・2%)、県内は236世帯(60・1%)にのぼった。
 「5年以内に帰郷する具体的な予定がある」は全体の8世帯(1・3%)で、「いずれは帰郷したいが、当面は考えていない」との合計は78世帯(12・6%)。県外は36世帯(15・9%)、県内は42世帯(10・7%)だった。これに「未定」を合わせても、全体では152世帯(24・5%)にとどまり、「無回答」は82世帯(13・2%)あった。
 前回調査では、応急仮設住宅の供与期間の延長期限終了時期(3年3月末)を見据えて「2年以内」の帰郷意思を確認。今回は第2期復興・創生期間終了時期(8年3月末)に合わせた「5年以内」に変更した。
 県は結果を踏まえ、「前回調査と単純に比較することはできないが、県外・県内避難者ともに元年度時点で帰郷意思があった世帯や未定、無回答だった世帯の半数以上が『帰郷予定なし』と答えており、発災から10年が経過する中で、避難先自治体での定住を選択する流れが強まっている」と分析している。
 「5年以内に帰郷~」「いずれは帰郷~」「未定」のいずれかを答えた世帯に質問した「帰郷するうえでの支障」(複数回答)で最も多かったのは、「家の再建の目途が不明」の31・6%(県外25・0%、県内35・9%)。次は「岩手県・被災元市町村に仕事が見つからない」の30・3%(県外26・7%、県内32・6%)。
 全世帯に「今の生活で困っていることや不安なこと」を聞いたところ、最も多かったのは「自分自身や家族の身体、心の健康」の32・4%(県外26・9%、県内35・6%)。一方で、「特になし」も32・3%(県外33・9%、県内31・3%)と多かった。自由記載の意見からは、「自宅再建後の住宅ローンの支払い」「被災元の土地の処分」などが困りごととして挙がった。
 県は、帰郷希望者への支援や生活上の困りごと等への対応などを今後も継続。調査結果は、避難先都道府県や被災元市町村に情報を提供して今後の避難者支援の参考にしてもらうとともに、個人情報の同意があった世帯の回答内容については被災元市町村などに伝え、個別支援に活用してもらうとしている。