ふるさとタクシー助成支援拡充を検討 対象地域 「全域」を視野 来年度実施を目指す
令和3年12月26日付 7面

市長が市政懇談会で考え示す
陸前高田市は、市中心部から離れて暮らす高齢者や重度障害者向けにタクシー助成券を配っている「ふるさとタクシー助成事業」の対象を、来年度から市内全域に拡充する方向で検討している。戸羽太市長が、11月から各地区で順次開催している市政懇談会で「内部で検討している」と住民からの質問に答える形で考えを明かした。関連経費を盛り込む令和4年度一般会計当初予算案を市議会3月定例会に提出する見込み。高齢化が進み、車を持たない人などの移動手段の確保が過疎地域のみならず、市全体の重大な課題となる中、これまで限定していた支援の対象地域を一気に全域に広げ、高齢者の外出を後押ししたい考えだ。
戸羽市長は、今月行われた今泉地区や下矢作地区、高田地区などの市政懇談会の中で、同事業の対象地域を全域に拡大したい腹案を住民に伝えた。懇談会では、住民側から移動の足がないため支援を求める声が多く寄せられている。
現制度の助成額は、年間最大3万6000円分。対象は、矢作町生出、二又、雪沢地区、横田町全域、広田町全域に住む75歳以上の運転免許を持たない高齢者と、市内に住む身体障害者手帳(1、2級)、療育手帳(A)、精神保健福祉手帳(1級)を持っている人。本年度から対象者の家族ら介護者も助成券を使えるようにした。
市は現在、来年度予算編成の作業中で、制度を見直している段階だが、現制度の年齢制限などの基準を生かしつつ、対象地域を撤廃する見通し。ただし助成額は、中心市街地からの距離に応じて上限を定めるとみられる。
事業は、重度障害者を対象とする福祉タクシー助成事業を引き継ぎ、平成29年7月に開始。運転免許を持たず、公共交通の運行頻度が少ない地域の高齢者を対象に追加し、助成券の交付枚数も増やした。その後も乗車1回当たりの利用枚数制限を撤廃するなど毎年制度の改善を重ねてきた。
市によると、平成30年度の交付実績は、延べ利用者数2265人、利用額981万円。31年度(令和元年度)は同2495人、同1088万円。令和2年度は、延べ利用者数が2453人で前年度比42人減だったものの、利用額は1126万円と同38万円増となった。
市内では、移動困難者の足を確保するべく、住民主体の取り組みが広がりを見せる。横田地区では4月、住民自ら運転手となり、高齢者を送迎する乗り合い車両の運行を本格的に開始した。矢作町二又地区では8月、同様の実証実験が始まり、同町生出地区は公共交通の利用促進に向けたイベントを企画している。米崎町の上浜田地区では、地域で車を共同利用する「コミュニティ・カーシェアリング」に取り組んでいる。
一方、市は来年春、時速20㌔未満で公道を走れる環境に優しい電動車「グリーンスローモビリティ」の運行開始を目指している。平日は買い物や通院のための高齢者や障害者を含む市民の移動手段として活用し、週末は観光客向けに集客施設を巡るコースで走らせることとしている。