コロナ禍も伝統つなぐ 「たらじがね」戒め歩く 三陸町越喜来の崎浜などで(別写真あり)
令和4年1月18日付 7面
【一部既報】大船渡市三陸町越喜来・崎浜地区の小正月の伝統行事「たらじがね」が15日夕、行われた。今年は史上初めて他地区も拡大訪問。恐ろしい面をつけた〝じがね〟が家々などを回り、子どもたちの健やかな成長を願って戒め歩いた。新型コロナウイルス禍でも伝統をつなぎ、コロナの収束や今年一年の大漁、豊作も祈った。
初めて他地区も訪問
同地区では意地悪なおじいさんを「じがね」と呼び、米俵を背負ったじがねが泣き虫な子、言うことを聞かない子、怠け者などを戒め歩いたことが由来とされる。
古くは「ひがたたぐり」とも呼ばれ、いろりの前で怠けてばかりいる者のすねにできる斑点をはぎ取ることを意味する。
起源は定かではないが、少なくとも昭和初期には始まっていたという。戦時中など、昭和から平成にかけて途絶えた時期もあったが、約20年前に現在のたらじがね保存会の瀧澤英喜会長(64)らが子どもの頃を思い出し、復活させた。東日本大震災後、数年間の中断も経て継承されている。
今年は崎浜地区の30代の男性5人がわらみのと面を身に着けてじがねに扮した。越喜来こども園の保護者同士のつながりで依頼を受け、初めて崎浜を出て甫嶺、泊、浦浜各地区も訪問。小学生以下の子どもたちの民家7軒とおきらい放課後児童クラブ(三陸公民館内)を回った。
ドンドンと音を鳴らして押し入ったじがねが「わりぃ子はいねぇがぁ」「ママの言うごどきぐがぁ」などと威圧感のある声でただすと、子どもたちは恐怖で泣きわめいたり、硬直したり、逃げ隠れしたりと各家庭が騒然となったが、家族は笑顔で見守った。
中野楽楽さん(越喜来小3年)は「怖かったが、面白い鬼(じがね)もいた。大人のみんなの言うことを聞くと約束した」と冷静さを取り戻してから振り返った。
瀧澤会長は「少子化で崎浜では年々回る軒数が少なくなっていたが、今年は地区を広げることができた。あまりない奇習として大切に残し、つなげていきたい」と話した。