地震なき津波警報 トンガ海底火山噴火で 未明の発表に緊張走る 気仙(別写真あり)

▲ 陸こうの閉鎖で通行止めとなった主要地方道大船渡広田陸前高田線=大船渡市末崎町、16日午後12時23分

 日本からおよそ8000㌔離れた南太平洋のトンガ近海で海底火山が噴火した影響で、気象庁は16日未明に本県沿岸と鹿児島県の島しょ部に津波警報を、太平洋沿岸を中心とした広範囲に津波注意報を発表した。地震を伴う通常の津波とは異なるケースで、同庁は津波警報の仕組みを使って防災対応を呼びかけた。本県に津波警報が出されたのは東日本大震災以来で、気仙でも未明に鳴り響いたサイレンに緊張が走った。警報、注意報は同日午後2時までに解除され、人的被害はなかった。一方、大船渡市で最大30㌢の水位上昇が確認されており、カキなど海上の養殖施設への被害も懸念される。

 

陸前高田市コミュニティホールに避難した家族=16日午前1時45分

 トンガ近海での噴火は、日本時間の15日午後1時ごろ発生。気象庁は当初、「若干の海面変動が予想されるが被害の心配はない」としたが、16日午前0時15分、鹿児島県の奄美群島・トカラ列島に津波警報、太平洋沿岸を中心に津波注意報を出した。
 その後、本県では久慈市で1・1㍍の潮位上昇が確認され、同2時54分に警報へ切り替わった。
 気象庁では、「今回の潮位変化は地震に伴い発生する通常の津波とは異なる」とし、防災上の観点から津波警報の仕組みを使って対応を呼びかけた。
 気仙では注意報を受けて大船渡、陸前高田両市が海沿いの地域や震災の浸水区域に避難指示を出した。
 大船渡市では地区公民館や学校、保育園施設に合わせて377人、車両202台が避難。大船渡町の大船渡地区公民館では、午前1時30分には6人が館内の和室などに入り、暖房器具の前で体を休めながら、テレビを見つめた。新型コロナウイルス感染予防のため館内に入らず、車内で過ごす避難者も見られた。
 同町明神前の金與志正さん(74)は「サイレンが鳴ってすぐ準備をして歩いてきた。被災した時には別の場所に住んでいたが、今の自宅は川が近いので、こっちに来た方が安心できる」と語った。
 同地内に住む80代女性は、震災で半壊した住まいを修繕して生活。「家にいることも考えたが、落ち着かなかったので歩いてきた。震災の時も、ここで50日近くお世話になった。津波はやはり怖い」と話していた。
 また、家族3人でリアスホールへ車で避難した盛町在住の30代男性は「地震がなかったので驚いたが、万が一を考えて来た」と、車内で不安な夜を過ごした。
 陸前高田市では、市内8地区のコミュニティセンターに避難所を開設し、最大で34世帯79人が避難。高田町の市コミュニティホールに家族4人で避難した同町の女性(29)は、「7歳と0歳の息子がおり、小さい子のミルクなどが必要なので来た。サイレンの音で震災を思い出したが、明るい場所は安心する」と話し、家族と身を寄せ合った。
 三陸鉄道、JR大船渡線BRT、同釜石線、県交通バスは始発から運転を休止。震災浸水区域内などで開店を見合わせる店舗も見られた。県立大船渡高校が会場の大学入学共通テスト2日目は、予定通り実施。大船渡市で予定されていた「つばきまつりプレイベント」は中止となった。
 県は震災後に導入した水門・陸こう自動閉鎖システムを初めて稼働。気仙ではシステムを運用開始した7漁港の陸こう23カ所が閉鎖された。大船渡市末崎町の大船渡漁港海岸に整備された国内初の海底設置型フラップゲート水門も稼働した。主要地方道大船渡広田陸前高田線は、同町峰岸地内の陸こう閉鎖によって一時通行止めとなった。
 警報は午前11時20分に注意報へと切り替わり、午後2時に解除された。17日午後5時現在、気仙両市で人的被害は報告されていない。大船渡市では最大で30㌢の潮位変化が観測され、市によると、三陸町内の各漁港で16日午前6~7時にかけ、潮位変化に加えて急激な海流によるものとみられる「うず」が確認されたという。海上の養殖施設への影響が懸念されており、気仙両市と漁協で調査を進めている。

 

陸前高田市防災メールで誤報

 

 陸前高田市が防災行政無線の内容などを配信する防災メールで、16日の津波注意報後、津波にかかるものではない誤った内容が配信された。
 同日午前0時20分ごろ配信したもので、「火災が発生しました。現場近くの方はご注意ください」という文面。
 市消防本部によると操作ミスが原因といい、同28分ごろ注意報と避難指示にかかる正しい内容に改めて配信し、その後に訂正情報も発信した。誤報による消防団活動などの混乱はなかった。