畜養ウニ 通年出荷実現へ期待膨らむ 県内初の1月出荷に成功 県の綾里漁協委託事業 LEDライト用い〝旬〟早める

▲ 出荷された畜養ウニを殻むきする産直グループ社員ら。綾里漁協が県内初の1月出荷に成功した

 大船渡市三陸町の綾里漁協(和田豊太郎代表理事組合長)は20日、県の委託を受けて綾里漁港で行っているウニの畜養調査で、県によると県内で初めてとなるウニの1月出荷に成功した。夜間もLED(発行ダイオード)ライトを用いて人工的に日の長い環境をつくり、季節を錯覚させ、〝旬〟の時期を早めた。21日に赤崎町の産直グループ㈲(上野孝雄社長)が販売する。昨年は県内初の9月出荷にも成功しており、関係者は品薄期の高値での販売や漁業者の収益力向上につながるウニの通年出荷実現へ期待を膨らませた。

 20日は10月上旬に綾里の海から間引きし、綾里漁港内の畜養池(約500平方㍍、深さ約3㍍)に移植後、3カ月超畜養してきたウニのうち、殻付き約50㌔を同漁協と県大船渡水産振興センターの職員4人がタモ網で水揚げ。産直グループ㈲に出荷し、上野社長と社員ら5人が殻むきを行った。
 上野社長は「端境期の今の時期にしては結構身が入っていた。多少高くてもかなり売れると思う。われわれとしても商品化できればすごくいい」と喜んだ。
 畜養調査は海中で餌となる海藻が不足し、実入りの悪いウニが増加していることを受け、新たな畜養・出荷モデルの構築や海中の生息密度の適正化につなげる県の「黄金のウニ収益力向上推進事業調査業務」の一環で、昨年度(昨年1月)から行っている。
 昨年6〜9月の通算2期目にも夜間にLEDライトを用い、日照時間が長い夏が続いていると錯覚させることで、通常は盆前に身溶けが進み、商品価値がなくなる時期を遅らせる実証に成功。9月の出荷を実現した。
 今回は通算3期目で、昨年10月上旬に約480㌔のウニを投入。週2回、塩蔵ワカメの残渣やメカブを与えて畜養した。
 今期は一度短日(自然日長)を経験させ、11月4日から夜間にLEDライトで光を当て始めた。人工的に日が長い環境をつくり、春から夏に向かっていると錯覚させ、餌の食いを良くし、商品が品薄な冬に旬を合わせられないかを調査した。
 畜養池に投入した10月上旬時点で実入りの状況を示す生殖腺指数は平均4・0%と低かったが、20日に出荷分とは別に30個を殻むきした結果、出荷レベルの11・5%までアップしていた。池に残っているウニは今後も出荷を検討している。
 同漁協は来年度以降、独自に畜養を続ける方針。同漁協総務課の佐々木伸一さん(48)は「この時期にウニを出荷できたことはなかったが、今回のくらいの餌と光で出荷できることが分かった。水産資源が不足する中で、量を確保できているウニの有効活用になり、継続してやっていける手応えを感じた」と話した。
 同センターの山野目健上席水産業普及指導員は「期待以上の実入りだ。生ウニがいつでも食べられる通年出荷に近づいている。出荷、販売方法が変わり、漁業者の収入向上と海中の藻場再生にもつながれば事業は成功だ」と声を弾ませた。