養殖施設85台に被害 トンガ沖海底火山噴火津波 続く苦境 気仙

▲ 片頭漁場で行われたはえ縄式施設の移動やロープの復旧作業(22日)

 今月15日に南太平洋のトンガ沖で起きた海底火山噴火による津波で、気仙沿岸では、カキやホタテなどの養殖施設計85台で被害を受けたことが、気仙両市や各漁協による調査で分かった。大半は復旧にめどがついた一方、養殖生産物の被害はすぐに把握できない面もあり、落下やこすれ合いに伴う影響を懸念する声も。担い手不足が課題となっている中で「苦境が続く漁業者を諦めさせないように」と、支援充実を求める声も出ている。

 

支援充実の求めも

 

 トンガ沖の噴火を受け、気象庁は16日午前0時15分に太平洋側の広範囲に津波注意報を発令。同2時54分には、岩手県沿岸を津波警報に切り替えた。
 気象庁による最大波の発表は、大船渡の0・3㍍のみだが、陸前高田でも同等の潮位上昇があったとみられる。潮位変化に加え、急激な海流によるものと予想される「うず」の目撃も相次いだ。
 大船渡市漁協管内の養殖施設では、海底のアンカーブロックが流されたことなどによる施設移動やロープのからまり、カキやホタテなど垂下物落下が確認された。養殖施設の被害施設は、はえ縄式69台、いかだ式1台の計70台となっている。
 このうち、大船渡湾内の湾口防波堤付近では、末崎側の片頭漁場で36台、赤崎側の蛸ノ浦・藤河原漁場で6台が被害を受けた。さらに湾央の同・獅子鼻漁場で20台、珊瑚島漁場と珊瑚島西漁場の各4台でも爪痕が残っていた。このほか、組合員が個人で所有する刺し網やかごなどの資機材にも被害があった。
 漁協関係者によると、片頭漁場にはカキやホタテ、ホヤを生産する約60台が設置されており、半数以上が打撃を受けた。復旧作業は18日に本格化し、22日午前も海上で元の位置に戻す作業などが行われた。同日までに、漁業活動再開のめどがついたという。
 施設復旧は進む一方、津波を受けて動いたことによる生産物の落下、こすれ合いで、今後の水揚げ量などにどの程度影響するかは、不透明な部分も。従事者の高齢化が進行する中、新型コロナウイルスに伴う漁価低迷といった影響も続いており、相次ぐ浜の試練に生産意欲の低下を懸念する声も広がる。
 市漁協では「養殖施設は共済制度に入っているが、津波の場合は『全損』でなければ補償が出ず、今回の規模では実費負担になるため困っている。湾内では、養殖施設に船舶が乗り上げる事故も多い。津波をはじめいろいろな被害があるたびに、やめる漁業者が出ているのが実態。諦めさせないような支援が重要」とし、国や県などに実情を訴える。
 陸前高田市や広田湾漁協では、小友地区でカキ養殖施設12台、米崎地区でエゾイシカゲガイやホタテ養殖施設3台のロープが切れるなどの被害が確認された。養殖物の落下被害は不明だが、大きな被害はなかったとみられる。
 ロープなど損傷箇所の仮復旧はすでに完了。本復旧は出荷シーズン終了後に行うこととしている。
 同漁協の村上修参事は「津波や潮位変動の影響は、沖よりも広田湾奥で受ける傾向にあり、今回もロープが切れたりするなどの被害があった。ただ想定よりも影響は小さく、迅速に仮復旧できて一安心した」と話す。
 また、大船渡市によると、三陸町の越喜来、吉浜各漁協での被害は21日時点で確認されていない。綾里漁協では標識灯1基の流失があったが、漁業施設そのものの被害は免れた。盛川漁協でも、河川に設置している施設の被害はないという。