トマト生産の道 一歩ずつ 横田町の太田さんが独り立ち JA子会社から米崎町の園芸施設での栽培継承

▲ JA子会社から独り立ちし、トマト栽培に励む太田さん

 陸前高田市横田町の農業・太田弘樹さん(29)は、㈱JAおおふなとアグリサービスが管理する米崎町の大規模園芸施設のトマト栽培を引き継ぎ、個人事業主として歩みを進めている。同社員としてトマトの生育に励み、ノウハウを磨いてきた。独り立ちして初めての収穫が始まっており、以前と変わらぬ高品質なトマトを届けようと情熱を傾ける。

 祖父母が兼業農家で、身近だった農業にもともと興味があった太田さんは平成26年、「人の健康を支える食に携わってみたい」と、アルバイトとして同社で勤務を始めた。その後、社員となり、27年に稼働を開始した大規模園芸施設で、未経験のトマト栽培を初年度から担当した。
 慣れない仕事の連続にはじめは悪戦苦闘したが、日々成長する作物と向き合うやりがいも大きかった。「おいしいトマトを消費者に」という一心で経験を積み、ハウス内の温度や湿度、二酸化炭素濃度、与える水の量など生育環境を整える重要性を学んだ。
 約8カ月間の収穫が終わり、次に向けての苗の定植が始まる昨年9月、同社からトマト栽培業務のバトンを受け継ぎ、夢に描いた独立を果たした。
 立ち上げた屋号は、「D─Design Farm(ディー・デザイン・ファーム)」。「デリシャス(おいしい)」「ドラマチック(感動的)」「ドリーミング(夢見る)」などの創出を目指して名付けた。
 40㌃前後のハウス2棟に「フルティカ」の苗約4万株を植え、昨年11月下旬に収穫がスタート。同社から派遣されたパート6人とともに摘み取りに当たっている。
 生育は順調で、東京都内の販売イベントではリピーターがつくほど好評を博したという。2月から最盛期に入り、夏までの今季収量は約46㌧を見込む。
 施設は、市が東日本大震災の津波浸水地に整備。広さ36~41㌃のハウスが計4棟あり、トマトとイチゴを育てている。イチゴ栽培も太田さんと同様、同社から独立した「Hs farm(エイチエス・ファーム)」(千葉勝久代表)が手掛けており、2月にはJAおおふなと各支店で、両品目の販売会を予定している。
 JAおおふなと営農部の紺野明次長は「トマト、イチゴどちらも地元の若者が熱心に取り組んでいる。農協としてもサポートしていきたい」と期待する。
 「やはり一番うれしいのは、地域の人に食べてもらい、『おいしい』と言ってもらえること」と太田さん。「アグリサービスをはじめたくさんのサポートを受けて今がある。一人でも多くの人に自分が育てたトマトを知ってもらい、食べてもらえるよう頑張る」と決意する。