「発酵」の可能性広げる カモシー内の2事業者が連携し、パンを使い新作ビール醸造(別写真あり)

▲ ベーカリー・マーロのパンを使って新作ビールを仕込む陸前高田マイクロブルワリーの熊谷店主

 陸前高田市気仙町の発酵パーク・カモシー内で営業する陸前高田マイクロブルワリーは1日、同じくカモシー内にあるベーカリー・マーロのパンを使ったクラフトビールの仕込みを初めて行った。売れ残ったパンを活用することで「食品ロス」削減につなげるだけでなく、不要となったものに新たな価値を加えられる「発酵」の力をPRする商品として、同施設で3月中旬からの発売を予定する。

 陸前高田マイクロブルワリーの熊谷克郎店主(40)は今回、マーロのパン約20㌔と、麦芽(モルト)約66㌔を使用して新作ビールを仕込んだ。食パンやバゲット、ブリオッシュなど、使われたパンの種類はさまざまで、いずれも2㌢角にカットした上でカリカリに焼き直し、麦芽と一緒に煮出して発酵させる。
 熊谷店主は「パンらしい、ふわっとした香ばしさが出てくれれば。パンに使われているタンパク質の効果で、コクや泡持ちの良さが期待できるかもしれない」と語る。
 パンを原料とした地ビールは世界中にあり、東京・六本木の有名ベーカリー「ブリコラージュ」のパンを使った「ブレッドビア」など、日本でも数カ所のビール醸造所が商品展開する。また、こうした取り組みは、不要になったものに新たな発想で高い価値を付け加えるリサイクル=「アップサイクル」としても注目を集める。
 マイクロブルワリーではこれまでも、カモシー内のチョコレート専門店カカオブローマと連携し、廃棄するカカオ豆の殻を使った黒ビール「カカオポーター」を醸造。施設内の飲食店で使われずに残った米と小麦を使った「ウィートエール」を手がけるなど、アップサイクルの商品を相次いで生み出している。
 陸前高田市が取り組みを推進するSDGs(持続可能な開発目標)達成にも貢献したいとする熊谷店主は、「最終的には廃棄されるパンがなくなり、このビールを造らずにすむのが理想。でも、どうしたって売れ残りは出てしまう。それならばこうして生まれ変わらせることで、皆さんにおいしく味わっていただければ」と語り、醸造するたびに使用するパンが異なる〝一期一会〟の味を楽しんでほしいとする。
 今回仕込んだビールは「ブレッドエール(仮称)」として、3月中旬ごろ発売予定。マイクロブルワリーの店頭で提供するものと瓶入り(330㍉㍑)を用意する。
 カモシーを運営するまちづくり会社・㈱醸の田村滿社長(75)は、「廃棄されてしまうものでも、ちょっと工夫すればこんな商品にできるんだよという、〝発酵の里〟らしい発信につながるビール。これからも事業者同士で連携し、発酵文化の良さと可能性を広げていきたい」と、完成に期待を寄せながら意気込みを新たにした。