「これからも見守って」 老朽化した社殿改修へ 地域住民奉斉の箱根神社 ふもとの人々の信仰あつく(別写真あり)

▲ 社殿にまつられた地蔵尊に手編みの帽子などをかぶせ、コロナ禍の収束を祈った佐々木トモ子さん

 陸前高田市小友町の地域奉斉神社「箱根神社」の社殿が老朽化し、近く改修されることが決まった。箱根山(446・8㍍)の山頂にある社は、昭和33年に町民らがブロック塀で手造りしたもの。同神社は東日本大震災の時も地域を守ってくれたとして、今も箱根山のふもとに暮らす人々から信仰を集めており、地元住民は「今後も大切におまつりしたい」と話している。

 

 小友町西の坊地区に住む佐々木トモ子さん(88)さんと、息子夫婦の玲さん(63)、ちや子さん(65)が1月30日、箱根神社を詣で、社殿にまつられた地蔵尊と雷神碑のほこりを払ったうえで、トモ子さんが縫った前かけや、手編みの帽子などを地蔵に供えた。
 神仏混交である同神社の社殿は、大正時代に建てられた木造のお堂が壊れたのをきっかけに昭和33年、ふもとにある西の坊、松山、岩井沢の3地区の住民が、徒歩でセメントや一升瓶に入れた水を運び上げ、自分たちの手で造り上げた。
 山頂にあり風が強い場所であるため、3地区による「箱根愛好会」がたびたび屋根等を修理しつつ使い続けてきたが、現在は扉や床が修復不能な状態まで壊れている。このため、同会に残された資金を活用し、地元の建設業者に扉などの改修を依頼することになった。
 トモ子さんは33年の社殿建立の際、ブロックを山まで担いで運んだうちの一人。そのころはおなかに玲さんを宿していたトモ子さんだが、「当時、大工だった夫は出稼ぎ中。同じように若い男手のない家が多く、嫁たちも手伝いに出させられた」と笑って振り返りながら、「でもおかげで元気に出産でき、今もみんなの健康を守ってもらっている」と語る。
 西の坊公民館には、同神社のお札と地蔵尊の〝分身〟をまつる場所が室内にあり、震災前までは、縁日である2月24日に「おかみさま(おがみさま)」と呼ばれる口寄せが行われていた。震災前年の平成22年には「来年、市内に大変なことが起きる」というお告げがあったという。
 地区の人たちが「まさか津波だべか」と尋ね、「みんなのこと守ってけらい」と頼むと、「ふもとまでしか守れない」という答えだった。このことからトモ子さんは早期避難を強く意識するようになり、近隣の人にも「地震が来たらすぐ逃げるべ」と呼びかけていた。そして23年3月の大津波の際には、地域内にいて亡くなった住民がおらず、改めて信仰心をあつくしたという。
 今もトモ子さんをはじめ、玲さん夫妻や家族も、元日には参拝を欠かさないといい、地域住民に大切にされ続けている同神社。トモ子さんの目下一番の願いは「新型コロナウイルス感染症の収束」だといい、この日も「みんなを見守ってください。コロナを吹き飛ばしてください」と熱心に祈りをささげ、「これからもずっと神社を大切にしたい」と話していた。