前オーナーの思い継ぎ復活 ノイマーレと海山酒場 11日に再 オープン 「まちに明るい希望を」

▲ 新沼さんの等身大パネルを挟み、営業再開に意欲を見せる細谷さん㊧と佐々木さん

 大船渡市大船渡町のキャッセン大船渡内に構える飲食店「ノイマーレ」「海山酒場」がそれぞれ、11日(金・祝)午後5時に営業を再開する。両店を経営していた新沼崇久さん(享年50)が昨年6月に事故で急逝して以降、休業が続いていたが、長年店長を務めてきた細谷春樹さん(40)が中心となり、新オーナーの下で店を切り盛りする。関係者は、大船渡の活性化にも奮闘してきた新沼さんの思いを受け継ぎ、中心市街地の活気創出に意欲を見せる。

 

 イタリア料理を中心とした「ノイマーレ」と、居酒屋メニューを取りそろえる「海山酒場」はいずれも、キャッセンフードヴィレッジに構え、平成29年春から営業。個人から数十人規模の宴会まで、幅広い世代が利用していた。
 前オーナーの新沼さんは、震災前から大船渡町内で飲食業を展開し、被災後も仮設店舗経営などを経て本設店舗を構えた。キャッセンエリアのイベント運営でも中心的な役割を務め、一昨年以降は新型コロナウイルスの影響が続く中、飲食店の活性化に向けた取り組みの〝旗振り役〟としても頼りにされていた。
 店は昨年6月8日まで営業を続けていたが、9日未明に交通事故で死去。オーナー不在となり、同日から休業となった。
 店長の細谷さんは再開意思を持っていたが、グループ補助を生かして導入した厨房機器などの債務整理をはじめ、個人では限界があった。夏場に解雇となり、陸前高田市内でアルバイトを続けながら模索していた。
 昨年11月ごろ、東京都内でウェブ制作会社㈱マーシーを運営する大船渡町出身の浦嶋雄昇さん(41)から、営業再開に向けて打診を受けた。同社は一昨年、盛町内に新規事業の一環としてボルダリングジムを開業。浦嶋さんは、新沼さんとも交流があった。
 再開が決まり、プレハブでの営業時代に料理人を務めていた佐々木敬文さん(37)が加わることになった。「お世話になった崇久さんの思いを受け継ぎたかった。店長の熱意に応えて貢献したい」と語り、新メニューの試作などを重ねる。
 座席の配置や内装は、休業前と同じ。料理メニューも多くをそのまま受け継ぎ、ピザやパスタなどに加え、地元食材を生かした逸品なども用意する方針。これまで通り個人や数人の利用だけでなく、団体客にも応じる。
 両店に新たに設けるのは、新沼さんの等身大パネル。笑顔で語りかける姿で、来店客を歓迎する。
 細谷さんは、新沼さんが亡くなる前日、店内で新たなピザ料理の試作に励んでいた姿が忘れられないという。「誰でも親しめる店づくりや、外から訪れた人が楽しく過ごせる雰囲気。大船渡のために動き、残したものを、何とかこれからも残し続けたい」と語る。
 新型ウイルスの影響が続き、地域の飲食店全体が厳しい状況に追い込まれている。逆境の中で「この店に電気がついていないと、やはり寂しい。コロナ禍で地域全体が沈んでいるからこそ、新しい明かりをつけたい。少しずつ営業のリズムをつかみ、にぎわいを生むことができれば」と力を込める。
 両店とも営業時間は午後5〜11時。問い合わせは海山酒場(℡22・7759)または、ノイマーレ(℡22・7760)へ。