「広田湾産イシカゲ貝」が登録 農水省のGI保護制度 陸前高田の特産二枚貝 ブランド確立へPR強化

▲ GI保護制度に登録された「広田湾産イシカゲ貝」

 陸前高田市の特産品「広田湾産イシカゲ貝」が、地域ブランドを知的財産として保護する農林水産省の「地理的表示(GI)保護制度」に登録され、生産者らが喜んでいる。県内の登録は7件目で、気仙地区では初めて。全国で唯一産業ベースで養殖しており、市場評価も高い自慢の高級二枚貝。今後は登録を証明するGIマークを使って出荷・販売していき、名前のPR、地域ブランドの確立を図っていく。

 

生産者喜び「励みになる」

 

 同市の広田湾漁協(砂田光保組合長)が申請し、今月3日に登録された。産品の確立した特性と地域との結び付きを証明するGIマークを特定の条件に基づいて使うことができ、同漁協はマークを付したステッカー作成などの準備を進めていく。
 広田湾産イシカゲ貝は、平成5年に天然の稚貝を採苗し、養殖技術を確立。8年に本格的な養殖生産が始まった。かみ応えと甘みが特徴で、希少価値が高く、都内のすし店などで使われている。
 東日本大震災で養殖施設が流失し、平成26年度から出荷を再開。生産者は現在16人で、本年度は新型コロナウイルス禍に伴う外食需要減の影響を色濃く受けたが、出荷量は62・5㌧と過去最多となった平成29年度(68㌧)に次ぐ実績に。東京・豊洲での取扱高は1㌔当たり3000円の高値を維持した。
 同漁協の村上修参事は「GIマークを使用してPRできるのは大きなメリット。コロナ禍の打撃を受けているが、売り出していく弾みになる。広田湾産イシカゲ貝の名前をどんどん発信していきたい」と力を込める。
 生産者でつくる同漁協広田湾産イシカゲ貝生産組合の熊谷信弘組合長は「震災ですべて流され、『もう一度頑張ろう』とみんなで力を合わせて生産してきた。国に認められ、GI登録されたことは大変励みになる。漁協をはじめ関係者に感謝している」と喜ぶ。
 一方で、熊谷組合長は「決められた基準を満たすものを生産していく責任も大きい。コロナに加え、海水温の上昇など海洋環境の変化も課題だ」と話し、「全国の人たちに陸前高田産のおいしい貝を届けられるよう引き続き頑張っていく」と気を引き締める。
 GI保護制度は、平成27年に施行された「特定農林水産物などの名称保護法」に基づき導入。特定の産地で一定の基準を満たして生産されたことを証明するもので、ブランド名の不正使用に対しては国が取り締まる。
 農水省のホームページによると、全体では40都道府県の110品、2カ国(イタリア、ベトナム)の3品の計113品が登録されており、県内では前沢牛(生産地・奥州市)、岩手野田村荒海ホタテ(同・野田村野田湾)、岩手木炭(同・岩手県)、二子さといも(同・北上市)、浄法寺漆(同・岩手県全域、青森県三戸郡など)、甲子柿(同・釜石市)がすでに登録されている。