市長任期満了へ1年切る 3期目現職・戸羽氏の態度注目

戸羽 太氏

 陸前高田市の戸羽太市長(57)=高田町=は13日、就任から11年を迎え、3期目の任期満了まで残り1年を切った。東日本大震災後のハード整備はほぼ完了し、にぎわい創出や交流人口拡大など創造的復興に軸足が移る中、新型コロナウイルス禍に伴う感染症対策や地域経済の活性化にも迫られている。現段階で4期目への態度を明らかにしておらず、他の出馬の動きも表面化していない。戸羽氏の態度表明時期とともに、次期市長選に向けた今後の動向に注目が集まる。

 戸羽氏は9日、東海新報社の取材に応じた。3期目のこの3年間について「さまざまな分野で活躍するプレーヤーが増えた。『陸前高田をいいまちにしよう』という共通の思いをいろいろな立場の人が持ってくれているのは、まちにとって大きな強みであり『協働』につながる。コロナさえなければ、もっといい形ができたのになという歯がゆさもある」と総括する。
 性別や年齢、障害の有無などあらゆる垣根を越えて誰もが住みよい「ノーマライゼーションという言葉のいらないまち」を基本理念の一つに、ゼロから取り組んできたまちづくり。今後は春に環境に優しい電気バス「グリーンスローモビリティ(グリスロ)」の本格運行、夏にピーカンナッツ産業振興施設オープン、秋に市立博物館の開館、全国の障害者らが交流する「きょうされん」の全国大会などが控える。
 任期が残り1年を切った中で、「まずはコロナにしっかり対処していく」と改めて決意する。そのうえで一次産業の振興、グローカル人材の育成、交流・関係人口の拡大、パラスポーツの普及などに意欲を見せ、「各分野で頑張っている人たちがいる。そうした一つ一つがまちづくりにつながっているという意識を市民の皆さんと共有する期間にもしたい」と見据える。
 過去2回の選挙では、ともに市議会9月定例会で出馬の意向を示してきた。次期市長選に関しては「コロナ対策を含め、今取り組むべき仕事がたくさんある」と明言を避け、態度表明は「しかるべき時期にしたい」と答えた。
 これまでの市長選を支えた市民団体「あたらしい陸前高田市をつくる市民の声」(市民の声、菅野隆介会長)は、現時点で動きを本格化していない。戸羽氏後援会の丹野紀雄会長(79)=高田町=は「本人の意思次第。どうするにせよ、後援会はその考えを尊重するだけだ」と話している。
 戸羽氏は神奈川県松田町生まれ。民間企業勤務を経て、平成7年の陸前高田市議選に初当選し、連続3期。19年同市助役に就き、翌月から22年12月まで副市長を務めた。翌年2月の市長選に初当選し、27年に再選した。
 31年2月の前回は、元県企画理事の新人・紺野由夫氏(62)=陸前高田市出身=との一騎打ちを制した。わずか5票差で当落が決まった大接戦。人口減少が進む中、復興の先を見据えた行財政運営が争点の一つとなった。特にも本格着工前だった7階建てという新市庁舎の規模がクローズアップされ、適切とする現職側と過剰とする新人側で、市を二分する激戦となった。
 関係者によると、紺野氏の後援会はすでに解散。本人の意思を踏まえての判断といい、支持者の一人は「地元からは『また次も』という根強い待望論があるが、やむを得ない」と受け止める。
 前回選後、紺野氏の支持者らが発足した同市の政治団体「改革たかた」は、今年1月に定期総会を開き、新たな代表に佐藤善治郎氏(73)=小友町=が就任。佐藤代表は「(次期市長選への候補などは)白紙の状況」と述べるにとどめている。
 次期市長選は、昭和30年の市制施行以来通算18回目で、震災後としては3回目。総人口は1月1日時点で1万7911人(県まとめ)で、震災前と比べて5310人減。高齢化率は40%を超え、持続可能なまちづくりが求められる。土地区画整理事業で整備した土地の利用率は昨年11月末時点で47%で、さらなる利活用を見据えたにぎわい創出も問われる。スピード感を持って取り組んできたコロナ対策は引き続き、待ったなしだ。
 市によると、昨年12月1日現在、市内有権者数(18歳以上)は1万6195人(男7809人、女8386人)。前回の選挙当日有権者数1万6682人(男8059人、女8623人)より487人少ない。