学びの成果 陸前高田に還元 SDGsテーマの冊子発行 清泉女子大学生が制作

▲ 清泉女子大の学生がまとめた「陸前高田SDGs物語」が完成

 東京都の清泉女子大学文学部地球市民学科は、国のSDGs未来都市に選定されている陸前高田市の魅力を伝える冊子「陸前高田SDGs物語」を発行した。市内でSDGs(持続可能な開発目標)を推進している個人や団体にスポットを当て、学生が本年度オンラインで実施したインタビュー内容を掲載。原稿執筆やレイアウトも学生自ら担い、クラウドファンディングで資金を確保して冊子化にこぎ着けた。新型コロナウイルス禍の影響で現地に足を運べない中、学びの成果を地域に還元しようとまとめた「努力の結晶」だ。

 

市内個人・団体にインタビュー

 

 冊子制作は、同科が昨年度、授業科目として開設した「陸前高田フィールドワーク」の一環。受講生と同授業指導教員・安齋徹教授(61)のゼミナール生の計38人が「チーム陸前高田」を組んで活動に当たり、今年1月に完成した。
 取り上げたのは、「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」など、SDGsの17の目標に合致する取り組みを展開する市内の17個人・団体。学生と現地とをリモートで結ぶコーディネートなどは、一般社団法人・マルゴト陸前高田(伊藤雅人代表理事)が全面協力し、昨年8〜9月に学生2人一組でインタビューした。
 それぞれ東日本大震災の体験談や震災後の10年間の足跡、SDGs目標達成に向けた活動、陸前高田への思いを聞き、担当した学生の所感とともに紹介。相手の思いを伝えるための編集に苦慮しながらも学生同士で推敲を重ね、並行して表紙デザインやレイアウトも検討してきた。
 自分たちのための記録誌とするだけでなく、内容を外部に発信し、陸前高田市の交流人口拡大、観光誘客につなげるべく、同大としては初めてという冊子増刷のためのクラウドファンディングにも乗り出した。「震災10年から未来への懸け橋となるような冊子を作りたい」という学生たちの熱意に応え、目標金額10万円を超える累計14万円が寄せられた。
 安齋教授は「完成したとき涙ぐむ学生もおり、よく頑張った。コロナ禍で学生たちは学業だけでなく、生活面でもつらい日々を送る。冊子制作に向けた努力は今後の糧になると思う」とたたえ、「一人でも多くの人に読んでもらい、陸前高田に行ってみたいと思ってもらえればありがたい」と期待する。
 マルゴト陸前高田の古谷恵一理事(33)は「授業を受けて終わりではなく、学びの成果を発信するという一歩先に踏み込んだ活動まで学生たちの力で発展させられたのは素晴らしいこと。オンライン形式でもこうして形にできるという一つの証しにもなる」と話した。
 冊子はA4判フルカラー40㌻。1000部発行し、旅行会社や東京・銀座にある岩手県のアンテナショップ「いわて銀河プラザ」などに送り、陸前高田市内ではマルゴト陸前高田、市観光物産協会で閲覧できる。