イサダ漁獲枠 今季4割減に 岩手、宮城両県で各9000㌧ 中長期的な資源確保へ 漁船漁業者が〝自主判断〟

▲ 春の大船渡市魚市場に活気を呼ぶイサダの水揚げ(昨年の様子)

 21日(月)に解禁を迎える今季イサダ漁で、岩手、宮城両県の漁獲枠が各9000㌧に設定された。これまでは1万5000㌧だったが、中長期的な資源確保を見据え、漁船漁業者が中心となって協議を進めた結果、4割に上る大幅減で合意した。イサダの水揚げ量は近年、大船渡市魚市場が県内の半数以上を占める。今季は漁況回復が期待される中、水産資源を守る取り組みの広がりにつながるか、今後の行方が注目される。

 

 今月、岩手と宮城、福島、茨城の4県による漁業代表者会議(書面開催)で、今季の上限量を昨季と同じ3万6700㌧に設定。内訳は岩手、宮城両県はそれぞれ1万5000㌧、福島県は2500㌧、茨城県は4200㌧とした。
 しかし、岩手、宮城両県は、実際の上限量をそれぞれ9000㌧とする。両県の漁船漁業関係者はこれまで、大船渡市内などで協議の場を設け、中長期的な資源確保を見据えた漁獲枠のあり方を検討。今月中旬、合意に至った。
 イサダはツノナシオキアミの別称で、主に養殖や遊漁の餌として流通。例年2月下旬から3月上旬に解禁され、漁況が良ければ4月末ごろまで水揚げが続く。
 水揚げされるカゴに入った桜色の魚体は、春の魚市場を色鮮やかに彩り、活気をもたらす。養殖用のエサや、レジャー向けとしての需要に加え、県内では近年、健康面からの付加価値向上に向けた取り組みも進む。
 近年、岩手の漁獲枠は1万5000㌧が続いたが、東日本大震災以降は到達していない。平成30年、31年は1万㌧を超えた一方、令和2年は1561㌧、昨年は2998㌧と大きく落ち込んだ。
 昨年実績のうち、大船渡は数量が1563㌧、金額は3億2761万円で、いずれも県内全体の半数超。3月中旬に200㌧超えが続いたが、2年連続で4月の水揚げがほとんどない状態で終わった。
 今季は、すでに沿岸で群れが見えているといい、今月下旬からまとまった漁獲が期待される。
 ただ、イサダは食物連鎖の末端に当たるプランクトンの一種で、他の魚種も餌としている。漁船漁業者を中心として「陸に揚げるだけでなく、海に残すことも考えていかなければ」との観点で、協議を進めてきた。
 岩手では、平成31年まで過去5年間の平均漁獲量は1万㌧程度だったが、さらに下回る漁獲枠に至った。一昨年12月に施行された改正漁業法でも、持続可能な資源水準に維持・回復する資源管理が基本原則に掲げられている。近年の低迷を受け、両県の漁業関係者が足並みをそろえ、自主的な削減を決断した。
 平成27年(2015)9月に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)を中核とする「持続可能な開発のための2030アジェンダ」でも、海洋資源の保全が目標に盛り込まれ、さまざまな分野での実践が求められている。市も水産資源管理の重要性を強調する中、現場主導の取り組みが今後どう広がるか、注目される。
 イサダ漁を営む第二十一志和丸の船頭で、県沿岸漁船漁業組合の志田惠洋組合長理事=大船渡市赤崎町=は、両県の漁船漁業関係者による協議の座長を担った。「水産業で一番大事なのは豊かな海を守ることで、それが地方や国の繁栄につながる。イサダが無尽蔵に取れる時代ではない。難しい判断に迫られたと思うが、協議にあたった漁業関係者に感謝したい」と話している。