一般会計は170億円 4年度当初予算案 現年度比7・5%減

 陸前高田市は21日、令和4年度の各種会計当初予算案を発表した。一般会計の総額は170億600万円で、現年度当初比13億7600万円(7・5%)減。新型コロナウイルス禍を踏まえ、感染拡大防止を徹底したうえ、市内経済悪化への対応、復興まちづくり、産業・なりわい再生などに重点を置き、持続可能なまちづくりを推進する。新規事業は26事業計5億4016万円で、ふるさとタクシー助成事業の拡充、高田松原津波復興祈念公園内での自動運転サービス実証実験関連費、米崎地区コミュニティセンターの改修費などを計上している。

 一般会計当初予算は、東日本大震災後に編成した平成24年度当初以降、最小規模。総額減は30年度当初から4年連続となる。
 歳入の自主財源のうち、市税は現年度当初比11・8%増の17億8447万円。財政調整基金や市債管理基金などからの繰入金は同48・7%増の31億2825万円で、過去に借り上げた地方債の未償還分などに対応するため大幅に伸びた。
 依存財源のうち、地方交付税は同28・1%減の54億7014万円、市債は同36・4%減の9億2730万円となっている。
 合計額は自主財源が66億858万円(構成比38・9%)、依存財源が103億9741万円(同61・1%)。歳入に占める自主財源の割合は、現年度当初比10・5ポイント増で、繰入金の大幅増などが押し上げた。
 財政調整基金は5億6264万円を取り崩し、4年度末残高は78億5324万円の見通し。市債残高は現年度末比13億2794万円減の119億8455万円で、市民1人当たりの借金は65万5000円となる見込み。プライマリーバランス(基礎的財政収支)は13億8456万円の黒字を維持している。
 歳出を目的別に見ると、多い順に民生費35億67万円、総務費34億573万円、土木費25億7197万円など。性質別では、義務的経費が62億9944万円(現年度当初比16・1%増)で、内訳は人件費22億4353万円(同1・7%減)、扶助費16億8155万円(同3・5%増)、公債費23億7435万円(同56・3%増)。投資的経費は、ピーカンナッツ産業振興施設整備費6億円を計上した現年度当初よりも普通建設事業費が圧縮され、同14・7%減の19億23万円となる。
 新規事業のうち、津波復興祈念公園での自動運転サービス実証実験には7700万円を計上。来園者に震災の教訓を伝えるため、点在する震災遺構などを巡る低速電動バスの自動運転化を見据え、4年度下半期に実証実験を始める計画。
 ふるさとタクシー助成事業費は2469万円。現行制度は、市中心部に離れて暮らす一部地域の高齢者や重度障害者に限定していたが、対象地域を市内全域に拡大する。助成額は、中心市街地からの距離に応じて6000円〜3万6000円とする方向だ。
 また、支え合い交通補助金も創設する計画。事業費は150万円。買い物や通院のための移動手段がない高齢者らを住民自ら送迎する「支え合い交通」に取り組んでいる主体に最大50万円を配る。
 米崎地区コミセンの改修費には、7000万円を計上する。市有施設の長寿命化を目指す市公共施設個別施設計画(令和3〜8年度)に基づく改修は1カ所目で、6月の着工、年内の完成を見込んでいる。
 産業分野では、ウニ、ナマコの畜養に乗り出す方針。関連費400万円を盛り込み、気仙町双六地区の漁港を改修する。地域農業の担い手確保のため50歳以上の新規就農者への農業資機材導入経費補助も始める。
 戸羽太市長は「コロナや海洋環境の影響で大変な状況にある水産業にてこ入れするなど、今やらないといけないことと、次の段階に光を当てていき、創造的復興に一歩踏み出すような予算を編成した。地域が活気づく一年となればいい」と話している。
 特別会計は、下水道事業5億8498万円(現年度当初比9・9%増)、農業集落排水事業6448万円(同1・7%増)、漁業集落排水事業7681万円(同17・1%減)、国保事業勘定20億8260万円(同5・1%減)、同診療施設勘定1億5769万円(同5・5%減)、後期高齢者医療2億8673万円(同18・1%増)、介護保険・保険事業勘定25億9466万円(同1・5%増)、同・介護サービス事業勘定2125万円(同15・7%増)。一般会計と6特別会計の合計額は、228億7524万円で、現年度当初費13億7443万円(5・7%)減となっている。
 一般会計当初予算は、震災前の22年度が約113億円、23年度が約108億円。24年度は復旧・復興事業関連で約660億円と膨らみ、25年度は約1019億円。26年度に約1293億円とピークに達した。27年度は約1195億円で、28年度以降は600〜800億円台で推移した。ハード復旧にほぼめどがついた令和3年度は183億円と前年度当初比72・6%の大幅減となった。
 各種会計予算案は、24日(木)開会の市議会3月定例会に提出される。