「海と生きる」考えに学ぶ スマトラ沖地震を経験したシティさんが津波伝承館に

▲ スマトラ沖地震での経験を踏まえながら、震災津波伝承館を見学したシティさん

 インドネシア出身で、平成16年12月のスマトラ沖地震を経験した東北大学大学院生のシティ・マグフィラさん(25)=宮城県仙台市=は24日、陸前高田市の東日本大震災津波伝承館を訪れた。シティさんは昨年、同館の震災伝承研修会で講師を務めたが、実際の訪問は初めて。この日は館内を見学して震災の事実や教訓はもちろん、「海とともに生きる」という被災地・岩手の考えにも触れ、自身の研究に役立てていくと誓った。

 

 スマトラ沖地震は、インドネシア西部、スマトラ島北西沖のインド洋で発生。マグニチュード9・1を記録する大きな地震と津波が起こり、東日本大震災の10倍に当たる20万人以上が犠牲となった。
 シティさんは9歳の時、古里のバンダ・アチェ市でこの災害を経験。その後、地元のNGO・コウゲツスクールアソシエーションで日本語講師を務める傍ら、スマトラ沖地震のアチェ津波に関するドキュメンタリー映画制作のプロジェクトリーダーとして、映画や生存者の証言集を手がけた。
 昨年2月には、伝承館の研修会(オンライン開催)で講師を務め、スマトラ沖地震の被害状況や現地における津波被害の伝承事例などを紹介。同10月からは東北大大学院に留学し、文学部で災害と宗教に関する研究を行っている。
 今回は、仙台市の一般社団法人3・11伝承ロード推進機構が主催するツアーで伝承館を訪問。ツアーにはシティさんら14人が参加し、同館解説員の案内を受けながら館内を見学した。
 シティさんは、館内のシアターや展示物などを見て回り、震災による津波の威力、被害の状況などを確認。同館の前には高田松原津波復興祈念公園内の「海を望む場」にも立ち寄り、震災後に整備された防潮堤や海の様子にも理解を深めた。
 見学を終えたシティさんは「東北には震災後に高い防潮堤が整備され、海が見えないが、アチェは防潮堤がなく、津波が来たらすぐに避難するという考え。国も人も異なり、海への考え方も違うが、伝承館で知った〝海とともに生きる〟という考えはいいなと思った」と振り返り、「自分の研究にも役に立つ経験になった。機会があればまた陸前高田を訪れたい」と再訪を誓っていた。