国境越えてアート交流 陸前高田市とシンガポール きょうCホールで作品展示会 高校生や障害者制作 (別写真あり)

▲ アート交流作品の制作作業に当たる高田高美術部員

 陸前高田市は6日、高田町の市コミュニティホールで、市内の高校生や障害者とシンガポールの障害者によるアート交流作品の展示会を開く。同国は共生社会の先進国として知られ、同市も多様性を認め合う「ノーマライゼーションという言葉のいらないまちづくり」を展開。東日本大震災を機に交流が盛んになり、本年度はアートを通じて絆を築くプロジェクトが動き出した。展示会は国境を越えた1年間の交流の集大成を披露する場で、関係者が多くの来場を呼びかけている。

 

 コミュニティホールでは5日、高田高美術部(千葉恵里子部長、部員5人)や市担当者らによる作品の仕上げ作業が急ピッチで進められた。途中、制作に携わったシンガポールの障害者と会場をオンラインで結び、作業の様子を紹介した。
 プロジェクトには、美術部員や市内の障害者約20人と、シンガポールの自閉症の支援学校生徒約10人が参加。おのおのがタブレット端末でデジタル絵画を制作し、100点を超える作品が集まった。すべての絵を段ボールや発泡板にプリントし、箱状に組み立ててから、床に置いたり、つるすほか、パネル展示する。

 作品のテーマは「新しいステップ~多くの人が望む未来へ~」で、美術部員が考案した。「最新デジタル機器をツールに、シンガポールとの新しい形の交流を行い、共生社会への未来を前向きに考えよう」という思いを込めたといい、市内障害者にタブレット使用方法のレクチャーも行った。

制作に携わったシンガポールとのオンライン交流も

 千葉部長(2年)は、陸前高田とシンガポールの海の景色をイメージしたデジタル絵6点を手掛けた。各作品の水平線の位置を統一し、両者がつながり合っている意味合いを持たせた。手前の陸地には車いすの障害者や子どもなどを描き、共生社会を表現した。
 千葉部長は「同じ作品は一つもなく、段ボールキューブなどで個性豊かな作品が混じっていることで『共生』を感じられる。シンガポールの人の作品を含め、一人一人が描いた思いを、地域の方々に感じてもらいたい」と呼びかける。
 同部の佐藤一枝顧問は「地域とのつながりを得られ、生徒の新たな学びとなった。さらにシンガポールとのアート交流という新しい取り組みに、デジタル機器を活用してトライできたのも大きい。制作の過程で一人一人の成長を確認でき、大変貴重な機会をいただいた」と喜んだ。
 シンガポールは震災後、コミュニティホールの建設費を支援するなど物心両面の支援を展開。その後、互いに物産展や文化発信のイベントを開催するなど交流を深めている。
 陸前高田市は昨年の東京五輪、パラリンピックで、「復興ありがとうホストタウン」「共生社会ホストタウン」となり同国を応援。昨年12月には、同ホール前にシンガポール政府公認の「マーライオン像」が建立された。
 展示会の会場は同ホールエントランスで、開催時間は午前10時~午後5時。無料で見学できる。