ビールの仕込み開始 住田町産のカエデ樹液副原料 陸前高田マイクロブルワリーでに(別写真あり)

▲ 仕込みを行う熊谷店主

 住田町の住田食材研究会(及川喜悦会長)による、イタヤカエデの樹液を使ったビールの商品化が本格的に動き出した。未利用資源だったイタヤカエデの活用を図ろうとの取り組みで、8日には醸造を委託した陸前高田市気仙町のビール醸造所「陸前高田マイクロブルワリー」(熊谷克郎店主)で仕込みがスタート。4月下旬ごろの製品化を見込んでおり、関係者らは「将来的には住田の名産に」と意気込む。

 

未利用資源をおいしく

 

 同研究会は、住田食材の魅力と気仙川をはじめとする豊かな景観を発掘、発信して町を元気にしようと平成24年度に設立。地元食材を使った料理の開発、川の景観を活用する川床の試作などに取り組んでいる。
 5、6年ほど前からは、町内に豊富に存在するイタヤカエデを使い、メープルシロップの製造にも着手。シロップを作るには樹液を40分の1ほどにまで煮詰める必要があるため、同研究会では「濃縮せずに、採取したものを100%使える方法はないか」と考え、ビールに着目し、昨年から取り組みを開始した。
 イタヤカエデの樹液は、2月上旬から3月上旬にかけての1カ月間採取でき、1本の木から20〜30㍑程度の採取が見込まれる。ドリルを使って木に深さ3㌢ほどの穴をあけ、ホースとポリタンクをつないで放置することで少しずつ樹液がたまっていくが、穴は自然にふさがるため木へのダメージも少なく、「持続可能」な取り組みにもつながる。
 同研究会では昨年、採取した樹液を一関市の「世嬉の一酒造」に持ち込み、試験的にビール製造を委託した。
 今回は、「気仙の名産品は気仙で製造を」との思いから、陸前高田マイクロブルワリーに樹液約400㍑を持ち込んで、これを副原料とするビールの醸造を委託。
 8日に仕込みがスタートし、1カ月ほどでビールが完成する予定。瓶詰めなどを経て4月下旬ごろには製品化となる見込みで、マイクロブルワリーの店頭でも販売するほか、販路を広げて商品を発信していく考え。
 昨年製造したものの再現ではなく、新たなレシピでの醸造。ビールのスタイルは、ドイツ発祥の「ケルシュ」で、すっきりとして飲みやすいためにイタエカエデの樹液とも相性が良さそうだという。
 同研究会から委託醸造の相談を受ける中で、「すごく熱意を感じた」と熊谷店主。両者は将来的には樹液の採取から試飲までを体験してもらうようなイベントも視野に入れているといい、「一緒になって盛り上げていけたら」と、地域活性化へ期待を寄せる。