岸田首相 陸前高田訪問 震災11年で復興状況視察 心のケア支援「後押しする」

▲ 達増知事㊧の説明に耳を傾ける岸田首相㊨(代表撮影)

 岸田文雄首相は12日、陸前高田市の高田松原津波復興祈念公園を訪れ、東日本大震災犠牲者を追悼し、発災から11年が経過した被災地の現状を視察した。首相の同市訪問は、就任直後の昨年10月以来2度目。「東北の復興なくして日本の再生なし」と強調し、被災者の心のケアや産業復興など自治体の取り組みを後押しする考えを示した。戸羽太市長はウクライナ人の避難民の受け入れに協力する意向を伝えた。

 

 岸田首相は同日朝、大船渡市内の宿泊施設から陸前高田市入りし、午前7時35分ごろ、祈念公園に到着。達増拓也知事や戸羽市長、東北地方整備局の稲田雅裕局長が出迎え、「献花の場」に花を手向け、黙とうをささげた。
 園内の震災津波伝承館では、達増知事、戸羽市長から復興状況や要望などを聞いた。
 戸羽市長は、ロシアのウクライナ侵攻に関し、「私たちは震災後、世界中の皆さんにお世話になった。ニーズがあれば、一時的にでもウクライナの人たちを受け入れられないかと考えている」と申し入れた。
 達増知事も避難民の受け入れについて「県としても市町村と連携しながら対応したい」と同調。さらに、主要魚種の深刻な不漁や災害公営住宅のコミュニティー形成支援、被災者の心のケアなど課題を取り上げ、支援の継続を要望し、国際リニアコライダー(ILC)誘致実現に向けた取り組み強化も求めた。
 首相の訪問時、同園にいた横田町の男性(71)は「忙しい中で陸前高田の現状を見てもらい、献花までしていただき、ありがたく思う。政府には空き地の活用に力を貸してほしい」と期待した。
 視察終了後、達増知事は記者団の取材に応じ、「3月11日を踏まえて訪問してもらったのは非常にありがたい。心のケアやコミュニティー形成支援など、首相も問題意識を持っており、『東北の復興なくして日本の再生なし』という言葉を直接聞くことができて良かった」と語った。
 戸羽市長は「世界中から、あたたかな支援を受けてきた。その立場として、ウクライナ難民を受け入れたいという思いを首相に伝える機会にもなった。11年たってもこうして直接足を運んでいただき、思いを寄せてもらっているのはありがたいこと」と感謝した。
 首相はその後、宮城県石巻市も訪問。一連の視察を終え、記者団に「ハード面での整備が進んだ一方で、引き続き心のケアや産業、なりわいの復興といったソフト面での取り組みを着実に進めていかなければならない。生活再建のステージに応じて切れ目なく支援を用意していくことが重要で、国としても自治体の取り組みを後押ししていきたい」と述べた。
 また、ウクライナからの避難民受け入れに関し、「避難民の要望を踏まえたうえで、自治体と連携しながら期待に応えられるような受け入れを考えていく」と語った。