■視点/全国椿サミット大船渡大会2度目の中止㊤  無念さをバネに活性化を 震災以降の取り組みどう生かすか

▲ 世界の椿館・碁石で21日まで開催された「つばきまつり」。すでに完成していた椿サミットポスターに「中止」の張り紙を添えた

 大船渡市内で今月開催を目指した第32回全国椿サミット大船渡大会は、新型コロナウイルスの影響で中止となった。平成23年も東日本大震災で開催を断念し、平成12年以来2度目となる大船渡大会は、またしても実現しなかった。一方、市内では震災後、復興や新たな振興策の一環で地域資源であるツバキを活用した取り組みが広がった。市内では「このままツバキを生かしたまちづくりがしぼんでしまうのでは」と、懸念の声も少なくない。今後も、無念さをバネとした官民協働の活性化策が求められる。(佐藤 壮)

 

 今月19、20日に市内で予定されていた椿サミットの中止を決めたのは、1月26日に開かれた実行委員会。事務局から新型ウイルスの急激な感染拡大を受け「感染者数の見当がつかない」「大会を安全に実施できる根拠がない」などの理由とともに提案があり、出席した委員から異論は出なかった。
 移動費のキャンセル料などが発生しない段階で判断しなければならず、当時は2カ月後の感染状況にはまだ不透明な部分があった。結果的に、感染状況は「収束」と呼べる状況には至らなかった。くしくも、首都圏などで1月に出ていた「まん延防止等重点措置」は、大会開催予定日の翌日となる21日まで続いた。
 岩手県は同措置の対象外だが、県独自の緊急事態宣言が続き、市内でも感染確認が続いている。現段階で、市内で「やはり開催すべきだった」といった民意は感じられない。

 新型ウイルスの影響が生活・産業全般に広がり、2年が経過した。この間、多くの人々を呼び込む主要イベントも中止や延期、規模縮小などが相次ぎ、通常通り開催できないことが当たり前になりつつある。
 市内では、産業まつりが2年連続で中止となった。ただ、こうした毎年恒例のイベントは、年度ごとに開催の可否を決める。中止とともに「来年こそは」と願う光景も見慣れたものとなったが、椿サミット実行委の議論は違った。
 椿サミットは年に1回、同サミット協議会に加入する市町村の持ち回りで開催している。実行委員会の協議では「1年ずらしての開催も一考では」との声もあった。
 しかし、事務局は来年度、再来年度の開催に関し、すでに県外他市が誘致の意向を表明していることなどを示した。大船渡での開催を目指す再誘致の方針は〝開花〟しなかった。

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 三陸・大船渡第25回つばきまつりが開催された末崎町の世界の椿館・碁石では、21日までの3日間、来場者に対し、本来は椿サミット参加者に贈呈する予定だったツバキの苗木を贈呈した。すべての苗木に「『椿』を生かしたまちづくりを継続しますので、ご協力を」とのメッセージを添えた。まずは、いち早く、継続の姿勢を具体的に示す姿勢が求められる。
 大船渡ツバキ協会の林田勲会長は「中止は間違った判断ではないと思っている」としつつも、「市のツバキに対する意気込みを見せるべきではないか。機運が盛り上がったものを、後にもつながるような形で締めくくりとすべき」と力を込める。
 11年にわたる復旧・復興の過程では、被災者やまちづくりに対してだけでなく、ツバキを通じた支援も受けてきた。新たなまちづくりや地域活性化、特産品づくりを見据え、官民双方でさまざまな取り組みが行われた。
 大会成功はもちろんだが、市内で震災後に芽生えたツバキを生かした活性化策が、さらに大成するよう弾みをつける機会でもあったはずだ。開催は見送られても、地道に育んできたツバキを生かしたまちづくりや、交流人口拡大の取り組みを、さらに充実させる動きが求められる。
 林田会長は「大船渡の一人一人が関心を持ち、ツバキを見て、楽しむ流れになってほしい。市民もツバキに興味を持つ。そういうふうになることが、サミットのあり方ではないか」とも語る。
 開催を通じて、何を発信し、市民にどのような機会を生むつもりだったのか。中止となった今こそ、理念や目的を見つめ直し、実現へと歯車を動かす取り組みが欠かせない。