さらなる広域連携を 整備効果など確認 三陸道等利活用懇談会 釜石などで

▲ 三陸道の整備効果などを確認し、活用のあり方を探った懇談会(南三陸沿岸国道事務所)

 岩手、青森両県内に復興道路、復興支援道路として整備された三陸沿岸道路(三陸道)、釜石自動車道、宮古盛岡横断道路の沿線19市町村と国、県で構成する「三陸沿岸道路等利活用懇談会」は23日、釜石市の南三陸沿岸国道事務所などで開かれた。気仙3市町も出席し、各道路の整備効果などを確認したうえで、さらなる広域連携を図っていこうと誓い合った。
 同懇談会は、国が岩手、青森両県内の復興道路と復興支援道路を最大限に利活用し、広域連携の推進による地域活性化を図ろうと昨年10月に設置。
 第2回のこの日は、国土交通省東北地方整備局の三陸、青森河川、岩手河川、南三陸沿岸の4国道事務所とオブザーバーの同整備局道路部をオンラインで結び、構成機関の委員ら約30人が出席。釜石会場には、五十嵐俊一南三陸沿岸国道事務所長、大船渡市の志田努副市長、陸前高田市の舟波昭一副市長、住田町の佐々木真建設課長ら8人が臨んだ。
 議事では、▽利活用懇談会の実施状況▽三陸沿岸道路等の整備効果▽広域連携の取り組み事例と今後の方向性──を協議し、委員らが意見を交換した。
 懇談会では初回会議後、作業部会となる「三陸沿岸道路(北部)・宮古盛岡横断道路利活用」「三陸沿岸道路(南部)・釜石自動車道利活用」の各ワーキンググループ(WG)を設置。この話し合いをもとに、三陸道などの主な整備効果や、各道路を生かした取り組み事例などをまとめた。
 主な整備効果は、▽津波警報時でも主要幹線道路として機能▽クルーズ船オプショナルツアーの対象エリア拡大▽三陸沿岸の観光イベントによる観光活性化の支援▽県内沿岸部での教育旅行催行の支援▽スポーツ活動・復興防災教育を通じた地域振興の支援──など8項目。気仙の観光、地域振興などにも効果をもたらしている。
 沿線地域の広域連携事例では、気仙を含む県内の道の駅を紹介するガイドマップの制作、大船渡市など三陸道沿線の飲食店をマンガでPRする事業、みちのく潮風トレイルルートや陸前高田市内の見どころを解説したマップの作成などが報告された。
 また、昨年11~12月に実施した三陸沿岸地域の観光ニーズに関する調査結果も示された。三陸地域・観光旅行のイメージで多かったのは「おいしいものを食べる」の64%、「自然を満喫する」の49%。気仙3市町の5カ所を含む観光施設27カ所のうち、岩手を除く東北5県居住者の認知度が50%を超えたのは岩泉町の龍泉洞のみとなり、PR強化などの課題が浮き彫りとなった。
 この調査結果やWGでの意見などを踏まえ、懇談会では今後の取り組みの方向性として、▽他地域からの観光来訪機会の拡大▽観光拠点間の活性化・利便性向上▽産業・企業活動等の支援──の3点を提案。広域的なPR活動や宣伝などによる来訪機会の拡大、分かりやすい案内等による移動条件の向上、港湾アクセス利便性等のPRによる寄港誘致の促進などに向け、必要な取り組みを講じていくこととした。
 意見交換では、各市町村の出席者らが地元での取り組み事例などを発言。志田副市長は「遊ぼう大船渡スタンプラリーキャンペーン」を取り上げ、「地元の飲食店だけではなく、体験観光に誘導する取り組みになっている」と紹介。今秋、三陸沿岸都市会議が予定する交流人口拡大をテーマにしたシンポジウムの開催にも触れた。
 舟波陸前高田市副市長は、「高田松原運動公園や県立野外活動センターを生かし、スポーツ合宿を積極的に進めたい」と意欲。高田松原津波復興祈念公園の利便性向上に向けた取り組みにも言及した。
 佐々木課長は、釜石自動車道のインターチェンジに近い観光地・滝観洞周辺の再開発を進めていることなどを示し、「観光振興を図るうえで、三陸振興協議会などを通じて地域連携を図っていきたい」と述べた。
 懇談会では令和4年度もWGを進めながら、年に1、2回、話し合いの場を設けていくとしている。