ワイナリー建設へ一歩ずつ ブドウ苗木の植樹進める 小友町の及川さん 地域住民とともに思い込め

▲ ブドウの苗木の植樹作業を行う及川さん(中央)

 陸前高田市でワイナリーの建設を目指す及川恭平さん(28)=小友町=は3日、同市米崎町内でブドウの苗木の植樹作業を行った。及川さんは、東日本大震災後から地産ワインによる地域活性化を目指している。取り組みを応援する地元住民も植樹に協力し、白ワインの原料となる良質な実が成るよう思いを込めながら作業した。(阿部仁志)

 

 天気に恵まれたこの日は、及川さんと地元の農業関係者、有志ら合わせて10人で作業。及川さんが借用し管理している高台の民有地に、ブドウ「アルバリーニョ」の苗木150本を植えた。
 苗木は高さ60㌢ほど。及川さんが「根が放射状に土に広がるように」「支柱から指3本分ほど離した場所に植えて」と指示すると、参加者らがスコップを使っててきぱきと作業した。
 参加者の中には子どもたちの姿もあり、土の中から出てきた変わった形の根や虫を見つけて明るい声を響かせると、周囲の大人たちが表情を和らげた。ひんやりとした潮風が吹く中で日差しには暖かさも感じられ、自然豊かな同市で苗木がすくすくと成長することを全員で願っていた。
 及川さんは、大船渡高校生時代に震災を経験し、地元のまちづくりに関わることを決意。関東のワイン専門商社や、白ワインの生産地で知られるフランス・アルザスのワイナリーで修業し、令和2年にUターンして個人事業のワイナリー「Domaine Mikazuki(ドメーヌ ミカヅキ)」を起業した。
 親戚や知り合いの果樹園のほか、耕作放棄地化している土地を借り受け、ワインの原料となるブドウとリンゴの栽培を開始。現在、ブドウは約80㌃、リンゴは約20㌃の土地で育てており、規模拡大を目指している。
 将来的には、市内に独自の醸造施設を設けるとともに、ワインを楽しめるレストランと宿泊サービスを一体化した施設を整備するなど、6次産業化による地域経済への貢献を見据える。酒販免許の取得も目指しつつ、夢の実現に向かって着実に歩みを進める。
 及川さんは「今回の作業のように、声をかけて快く協力してくださる方々がいる環境に感謝したい。植えた苗木から実がとれるようになるまでには3、4年かかり、長い目で先を見つつ、結果を出せるようこつこつと頑張りたい」と意気込んでいた。