数量、金額とも30%減 大船渡魚市場の3年度実績 主力魚種 軒並み振るわず

▲ 主漁魚種がふるわず、前年度を大きく下回る実績となった大船渡市魚市場

 大船渡魚市場㈱(千葉隆美社長)が運営する大船渡市魚市場の令和3年度水揚げ実績がまとまった。数量は2万3955㌧、金額(税込み)は42億6450万円で、いずれも前年度比で30%減。サンマやイワシなどが前年を大きく下回り、漁業別では定置網の数量が伸びなかった。特に数量は昭和49年度以来47年ぶりの2万㌧台に終わり、主力魚種の不漁が色濃く反映された。(佐藤 壮)

 

47年ぶりの2万㌧台

 

 同社によると、魚種別実績のうち、サンマの数量は前年度比60・4%減の2472㌧。金額は同39・4%減の17億838万円で、魚市場全体の40%を占めた。
 サンマは東日本大震災で大きな被害を受けながらも、平成23年度は1万8438㌧を確保。その後も2万7000~1万1000㌧台で推移したが、令和元年度と2年度は6000㌧台に低迷。3年度は、さらに大きく落ち込んだ。
 それでも、大船渡は本州で数量、金額ともトップを維持。2年度の本州数量に占める割合は34・7%だったが、3年度は大船渡以上に各地の落ち込みが大きく、38・9%に上昇した。
 イワシの数量は前年度比36・2%減の9551㌧で、金額も同35・3%減の4億3881万円にとどまった。昨年は入梅時期の6~7月に小型サンマ船による特別採捕の水揚げがあったものの、1隻だけで100㌧を超える巻き網船の漁場が遠く、同船の水揚げは数量、金額とも前年度の2割にも届かなかった。
 定置網の主力魚種で、多獲性魚の一つであるサバは、数量が4514㌧で、同19・4%減。金額も同32・2%減の4億691万円と下回った。ブリ類も数量は1154㌧で同52・3%減、金額は1億8260万円で同51・5%減と、低調に終わった。
 秋サケは数量は同85・3%減の15㌧、金額は同79・5%減の2050万円と、10億円台で推移していた震災前に比べると壊滅的な実績に。イサダは数量が前年比1・5倍の2409㌧まで伸びたが、金額は1億8826万円と5割超にとどまった。
 落ち込みが目立った一方、カツオは数量が1556㌧と倍増し、震災以降では最多。金額も3億8650万円で、前年度比1・9倍となった。マグロは数量が同47・6%増の120㌧、金額は同40・6%増の1億8139万円にまで伸びた。
 実績を漁業別に見ると、定置網の数量は同6・4%減の1万2316㌧、金額は同15・7%減の12億3472万円と伸びなかった。気仙沿岸を漁場とする定置網の水揚げは、地元の漁協経営や水産加工業などにも大きく関わる。
 前年度の実績について、千葉社長は「今まで経験した自然の流れではない動きになっている。金額は、経済状況などで変化する部分があるが、われわれとすれば、数量の落ち込みが大きな不安材料。前浜での漁況に恵まれなかった」と振り返る。
 海洋環境の変化に加え、燃油費高騰やロシアのウクライナ侵攻に伴う国際情勢など、不透明要素は多い。千葉社長は「流れに沿って粛々と業務を進め、好転を待つしかない」とも語る。
 同魚市場の水揚げ実績は、震災が発生した平成23年度に数量が前年度比33・5%減の3万731㌧、金額が同43・5%減の38億円台まで落ち込んだ。
 以降は、施設や漁船の復旧が進んだことなどから数量・金額ともに回復。26年度は、数量が5万2000㌧台、金額が70億円台と震災前の水準にまで戻った。
 しかし、27年度以降は主力魚種の不漁などを受け、数量の伸び悩みが続く。市が昨年3月に策定した市水産業振興計画では、水産加工・流通機能の強化として、魚市場実績の令和7年度目標値に「数量5万㌧、金額70億円」を掲げている。