消防指令業務 共同運用へ 陸前高田など県内10消防本部 盛岡にセンター設置 8年4月からの開始目指す(別写真あり)
令和4年4月8日付 1面

陸前高田市消防本部など県内10の消防本部で構成する「いわて消防通信指令事務協議会」(会長・上平久浩盛岡地区広域消防組合消防長)は今月1日に設置され、盛岡市の盛岡中央消防署で7日、発足式が行われた。119番通報受信や出動指令など、広域にわたる消防指令業務を盛岡に集約し、住民サービスの向上や災害対応力強化を図る「いわて消防指令センター」の運用開始を令和8年4月に見据え、協議を進めていく。(阿部仁志)
事務協議会が発足
発足式には、先月末までに同協議会設置に係る協議書を取り交わした10団体(各市、消防組合、行政組合、広域連合など)の市長、管理者らに加え、同協議会を構成する各消防本部関係者ら約50人が出席。陸前高田市からは、戸羽太市長と市消防本部の戸羽進消防長らが臨んだ。
出席者紹介のあと、上平会長が同協議会の設置経緯や内容を説明。その後、10団体の市長、管理者らが協議書をお披露目した。
盛岡地区広域消防組合の谷藤裕明管理者は「全国各地で予想しがたい大規模な災害が相次いで発生している。このような中、消防指令業務の共同運用を実施することで、災害情報を一元的に把握することが可能となり、より迅速な災害対策がとれるようになる。住民のさらなる安心・安全の向上につなげたい」と語った。
消防指令業務の共同運用は、火災、救急、救助などの119番通報の受け付けや、消防・救急隊への出動指令を共同で行うもの。最新の消防指令システムを使うことにより、高度でより専門性の高い住民サービスの提供が可能となる。消防庁からの指針に基づき、全国各地で体制整備が進められている。
本県では、共同運用の「第1期」として、盛岡地区広域消防組合と奥州金ケ崎行政事務組合、北上地区消防組合の3団体による「盛岡・奥州金ケ崎・北上地区消防通信指令事務協議会」を平成25年に設置。3エリアの消防指令業務を盛岡に集約する「岩手県央消防指令センター」の運用を28年に開始した。
さらに、共同運用の広域化を図る「第2期」の検討が進められ、今回のいわて消防通信指令事務協議会の設置に至った。
同協議会事務局によると、今回協議会に参加しなかった大船渡地区消防組合と一関市については、今後の共同運用への参加について「前向きに検討している」という。
いわて消防指令センターの運用開始は、令和8年4月1日を予定。盛岡中央消防署内への設置が決まっており、今後、共同運用のためのシステムの設計業務と整備工事を進める。
同センターにおける共同運用の主な効果としては▽住民サービスの向上▽災害対応力の強化▽行財政上の効率化──を挙げる。
このうち、住民サービスの向上では、ICT技術を活用した高機能システムを導入することにより、障害者向けのサービスやインターネットを介しての通報などといった緊急通報体系の多様化や、住民ニーズの変化に幅広く対応。職員の専従化とスキルアップにより、業務の高度化および効率化を図る。
一方、災害対応力の強化では、10団体の各地災害発生状況や消防車両の出動状況などの情報を一元的に管理することで、災害が拡大、複雑化した場合の近隣団体からの応援出動など、各消防本部の管轄区を越えた出動命令を可能とする。
行財政上の効率化では、高度なシステムの整備、維持管理に係る費用を10団体でまかなうことで、大幅な経費節減につなげる。
同事務局によると、同協議会の構成消防本部エリア(12市13町4村)における令和3年の119番受信件数は5万8000件以上で、火災、救急、救助等の出動件数は4万5000件以上。過去の実績をもとに、同センターにおける119番受信のシステムは、1日当たり約160件の受信があることを想定して構築され、「119番通報がかかりにくくなることはない」という。
消防指令業務の共同運用を行う団体次の通り。
陸前高田市、花巻市、遠野市、盛岡地区広域消防組合、宮古地区広域行政組合、釜石大槌地区行政事務組合、奥州金ケ崎行政事務組合、北上地区消防組合、二戸地区広域行政事務組合、久慈広域連合