コロナ下の楽しみと励みに ボランティア「せきれい」が個別の短歌録音CD寄贈 祥風苑入所者ら9人へ
令和4年4月14日付 7面

大船渡市盛町の市総合福祉センター内で「声の福祉図書館」を運営するボランティアグループ「せきれい」(金野聰子会長)は、猪川町の養護(盲)老人ホーム「祥風苑」(崎山美知枝施設長)の視覚障害のある入所者らが短歌教室で詠んだ句を個別に録音したCDを9人に贈った。新型コロナウイルス下の楽しみを届け、励みや記念にしてほしいと願う。(八重畑龍一)
「せきれい」は昭和63年に設立。視覚障害者や目の不自由な高齢者向けに会員が新聞記事、物語、詩・短歌などをCDや以前はカセットテープに録音した「声の雑誌『せきれい』」を平成5年から毎月、同施設を含めた各利用者に届けている。
以前は同施設を毎月訪れ、入所者の希望に応じて詩やエッセー、新聞・雑誌の記事などを読み聞かせしていたが、近年はコロナ禍で訪問を休止している。
会えない中でも「これからの励みや楽しみ、記念にしてほしい」と、施設で毎月2回開かれている短歌教室の作品の音声化を発案。広報誌「祥風苑通信」や東海新報の「東海文芸」に掲載されている短歌を個別にまとめた。
CDは昨年12月から今年3月にかけ、会員21人のうち、金野会長(83)ら6人で担当を決め、制作を進めた。表に入所者の名前や内容に合わせたイラストなどを入れ、完成後、順次届けてきた。施設の短歌クラブのメンバーと、一部は既に亡くなった入所者の家族ら計9人(家庭)に贈った。
交流のある会員がそれぞれの入所者に当てたメッセージとともに、短歌のイメージに合った曲や動物の鳴き声を入れるなどの工夫も凝らし、多い人では約80選、1時間ほどに及ぶ大作に仕上がった。
短歌は世界平和の願いなど時世に関する内容や、自分の家族、趣味、生活を取り上げたものなど、ユニークな作品がそろっている。
金野会長は「短歌を読ませてもらい、私たちの心も豊かになっている。気持ちをお届けすることができ、記念にしてほしい。コロナが収まったら、早く再会したい」と願った。
昨年亡くなった、仲良しだった入所者の短歌CDを受け取った富澤勝志さん(93)は「素晴らしい短歌の数々を収録した心のこもったCDで感激している。せきれいさんには読み聞かせもしていただき、ずっとお世話になっている。コロナが収まったらまた楽しみにしている」と感謝した。