三陸の二枚貝を守れ/貝毒原因の天敵生物発見㊤ 東北大学などの研究グループ 有毒プランクトンに寄生し殺生

▲ 貝毒の原因となる有毒プランクトンを死滅させる寄生生物を発見した東北大学研究グループの西谷准教授

 東北大学(仙台市)などの研究グループはホタテガイ、カキなどの二枚貝のまひ性貝毒の原因となる有毒プランクトンに寄生して死滅させる寄生生物の新種を国内で初めて発見した。近年は気仙など、本県の海域でも貝毒の発生による出荷規制の長期化に悩まされている中、将来的に海中で利用し、プランクトンの防除や貝毒の予防につながる可能性があり、早期の実用化が期待される。(八重畑龍一)

 

 新種の寄生生物は「アメーボフリア」と呼ばれ、植物プランクトンの中で最も種類が多い「渦鞭毛藻」のグループの一つとされる。
 東北大学大学院農学研究科の西谷豪准教授(47)=生物海洋学=らの研究グループが北里大学海洋生命科学部の山口峰生元教授から研究を引き継ぎ、2019年に大阪湾で発見。翌年、地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所と行った共同研究で、この寄生生物を同湾から採取し、室内実験(フラスコ内)で培養、増殖させることに成功した。
 研究の成果は、昨年10月に国際科学誌「Harmful Algae」で公開された。
 大きさは貝毒原因となる有毒プランクトン「アレキサンドリウム」の30〜40㍃㍍に対し、寄生生物は10分の1ほどの3〜10㍃㍍。「宿主」となる有毒プランクトンの細胞内に侵入し、爆発的に増殖する。細胞内で数百まで増殖した寄生生物は、最終的に細胞を突き破り、水中に分散し、次の宿主を求めて泳ぐ。

発見された寄生生物が有毒プランクトンに寄生する様子(研究グループ提供)

 別掲の図で、明るい背景は通常光による写真、黒い背景は特殊な蛍光を当てた写真で、赤く見えるのが有毒プランクトン(宿主)、緑が寄生生物を表す。

 図A・Bは寄生が起こっていない有毒プランクトンで、C・Dは周りに一つの寄生生物が付着している状態。宿主の細胞内に侵入し、爆発的に増殖する。
 図E・Fは感染初期、G・Hは中期、I・Jは後期を示す。寄生生物は最終的に宿主の細胞を突き破り、宿主は死滅。細胞外へ出ていき(K・L)、水中に分散するサイクルを2〜3日で繰り返す。
 この寄生生物は二枚貝の餌となる「珪藻」など、周辺の無害な生物や環境には影響を与えないことも分かっている。
 西谷准教授は「宿主が大量に入ったフラスコに、寄生生物に感染した宿主を一つ入れるだけで寄生生物を大量増殖させることができた。課題はあるが、何とか社会に研究成果を還元したい。寄生生物の利用を宮城県の海で早期に試験的に始め、東北の海から貝毒をなくしたい」と見据える。