並ぶ明かり 明日へつなぐ 今泉のまちづくり協議会 旧吉田家上棟を祝い諏訪神社に灯ろう設置 (別写真あり)
令和4年4月22日付 7面

陸前高田市気仙町の住民らでつくる陸前高田・今泉地区明日へのまちづくり協議会(村上孝嘉会長)は20日夜、同地区にある諏訪神社(河野聡宮司)の石段に灯ろうを設置した。同神社とゆかりが深い旧吉田家住宅の主屋上棟を祝う〝前夜祭〟であるとともに、並べた明かりには「今泉の未来が明るく照らされていくように」「まちへの思いが若い世代にも連なっていくように」といった願いも託された。(鈴木英里)
灯ろうは、同協議会理事の村上徳彦さん(54)が、実習教諭として勤務する県立一関清明支援学校の高等部生徒と一緒に用意したもの。木製の枠と、枠に張った紅白の紙すべてに「今泉地区明日へのまちづくり」とはんこを押し、石段の両脇に約100個を並べた。
LEDキャンドルの明かりは日が暮れるにつれ、紅白の紙を通して少しずつ濃さを増していき、その火が優しくちらちらと揺れる様子には集まった人たちも「なんだか懐かしく感じる」「灯ろう流しを思い出す」と、しみじみとした表情を見せた。
村上さんによると、今泉地区では東日本大震災前、900年以上続くとされる「けんか七夕」や、お盆、大みそかの時など、各家や商店の軒先、寺社にちょうちんがつるされていたほか、川施餓鬼慰霊祭(灯ろう流し)もあり、「生活の中に明かりが多いまちだったように思う」と振り返る。
同地区は東日本大震災で壊滅的な被害を受けたが、同協議会をはじめ、「古いものを大事にしながら、新たなまちづくりを進めていこう」という住民の機運も高い。この日は、地区の誇りである県指定有形文化財の旧吉田家住宅主屋が翌日に上棟式を迎えるにあたり、「今泉らしいお祝いを」として灯ろうの設置を企画した。
1160(永暦元)年に信州(長野県)の諏訪大社から分霊された諏訪神社は、大肝入・吉田家に隣接。平成23年の大津波で社務所等は流失したものの、社殿は高台にあり被害を免れた。村上さんたちが子どものころは地区の子ども会で毎週、石段の掃除をするなど、地域の人たちの信仰も集め、大事にされてきた。
その石段も、復興土地区画整理事業のかさ上げで数㍍分短くなり、周辺の区画は大きく変わった。新しい商業施設や住宅が建ち始め、復興の旗印である旧吉田家住宅主屋の復旧にもめどが立つなど、まちの形はようやくできつつあるが、村上さんは「本当の意味でのまちづくりはこれから」と気を引き締める。
古き良き今泉を知る協議会メンバーだけでなく、新しいことに挑戦しようとする若い世代も巻き込みながら、今後のことを考えていきたいと語る村上さんは、「今回の灯ろう設置も〝(まちの)その先〟を念頭に置いた小さな一歩だと思っている。若い人たちに、お金をかけなくてもいろんなことができると知ってもらいたい」と将来にも思いをはせながら、一夜限りの明かりを長い間見つめていた。