震災の教訓 名古屋で発信 陸前高田の取り組みなど伝える 港防災センターに常設展開設(別写真あり)

▲ 東日本大震災の被害と教訓、陸前高田の防災にまつわる常設展示コーナーが名古屋市港防災センターに開設された

 陸前高田市と友好都市協定を結ぶ愛知県名古屋市の「港防災センター」にこのほど、東日本大震災の概要や教訓などに関する常設展示コーナーが開設された。これまでも陸前高田における津波防災の取り組みを市職員や市民らを通じて積極的に発信してきた名古屋市だが、この展示を、今後発生しうる大地震と津波に対する意識をさらに高揚させる一助にしたい考えだ。(鈴木英里)

 

 名古屋市港防災センターは、昭和34年の伊勢湾台風など、水害で甚大な被害を受けた経験を持つ同市の防災啓発施設。災害の実態を正しく知り、それに対処する方法を身につけてもらうとともに、災害発生時には応急対策活動の拠点にもなる。
 今回の常設展開設は、近い将来に発生が懸念される南海トラフ巨大地震に対する日ごろの備えを市民に発信するため、東日本大震災の教訓、特に名古屋市が継続的に支援・交流している陸前高田市の被害や、現在の取り組みを紹介しようと企画。同市の大震災検証報告書などを元に、東海新報社が内容制作を手がけた。
 展示パネルはA0サイズ(841㍉×1189㍉)で、▽東日本大震災と陸前高田市の被害▽被害が拡大した要因▽大きな犠牲から学び取る教訓▽津波で失われたものと復興への歩み▽名古屋市と陸前高田市の絆▽陸前高田における新たな防災の取り組み▽陸前高田で震災と防災を知ろう――の7項目で構成。津波の威力とスピードを、乗り物の時速やビルの高さにたとえるなど、誰にでも身近に感じてもらえるよう分かりやすく伝える。
 東日本大震災でも人の生死を分けたのが避難行動であったことをはじめ、「津波てんでんこ」の教え、「率先避難者」たることの意味など、何よりも避難が大切であることを繰り返し強調するとともに、非常時ほど「正常性バイアス」が働き、どんな人でも油断してしまう可能性があることも説明する。
 陸前高田の新たなまちづくりにおいては、防潮堤や水門・陸こうの自動閉鎖システム整備、市街地のかさ上げといったハード事業だけでなく、市が独自に養成する「防災マイスター」や、小中学校での防災学習、避難訓練の内容強化といった新たな取り組みをしていること、津波到達地点にサクラを植えている桜ライン311、街路樹のハナミズキで避難道を彩る「ハナミズキのみち」の会など、民間の活動も紹介した。
 また、陸前高田市に派遣され、まちの復興に尽力してきた名古屋市職員が、震災の教訓を持ち帰り、積極的に防災・減災の取り組みを発信していることにも触れ、昨年度制定された両市の「絆の日(3月23日)」について、「陸前高田市に心を寄せ、震災の記憶や教訓を名古屋市民に伝えていく日にしたい」という名古屋市の思いも伝える。
 陸前高田市防災局防災課の中村吉雄課長は、「派遣で来ていただいた職員はもちろん、防災に関する市民交流の参加者も、陸前高田の教訓を自分たちのまちに生かしたいという思いを強く持っておられる。本市の取り組みも参考にしていただき、ご自分と大事な方の生命を守れるよう、備えてもらうきっかけになれば」と同展示に期待を寄せ、名古屋市防災危機管理局も「大震災の教訓と友好都市の絆を伝える場として、しっかり市民にPRしていきたい」としている。