吉浜・大窪山の太陽光発電 東北経産局が計画認定 住民説明会で事業者報告 パネル設置規模変更も
令和4年4月24日付 1面

大船渡市三陸町吉浜地区の大窪山市有地などで太陽光発電事業を計画している自然電力㈱(本社・福岡県福岡市、磯野謙、川戸健司、長谷川雅也代表取締役)は23日、同事業に関する説明会を旧吉浜中学校体育館で開催した。事業者側は、経済産業省東北経済産業局に再申請していた計画変更の認定を得たことを報告。太陽光パネル設置の規模を一部見直し、造成を避ける対策でモノレールを設置する方針も説明した。出席者は、事業そのものの賛成、反対双方から発言。市は今後、県における環境アセスメントの要否判断などを見極め、事業実施可否の総合判断を固める。(佐藤 壮)
賛成、反対双方から発言
説明会は、自然電力㈱と、同社の100%子会社で事業主体となる岩手三陸太陽光発電合同会社が主催。新型コロナウイルス感染防止の観点で、出席を市内在住者に限定し、約50人が訪れた。オブザーバーとして、戸田公明市長や志田努副市長らも並んだ。
冒頭、自然電力太陽光事業部の笠間貴之部長は、今月19日に東北経済産業局から変更認定を受けたことを報告。「脱炭素を推進し、青い地球を未来につなげるとともに、持続可能なまちづくりの一助になれれば。案件にご理解をいただきながら、事業を進めたい」と述べた。
住民向けの説明会は一昨年8月以来。その後、同社は計画を変更しており、変更内容を中心に示した。東北経産局からも変更申請を行う中で説明機会確保を求められてきたという。
当初は、吉浜地区・荒金山の市有地内に変電施設および太陽光パネルを設置する計画だった。自然環境などを懸念する住民意見などを踏まえて見直し、最終的には太陽光パネルを大窪山のみに設置する計画に変更した。
一昨年夏に示された計画では、荒金山には連携変電所のみを設置し、市が所有する大窪山の牧場跡地(事業用地約98㌶)に太陽光発電所を建設。発電容量は37メガワット。年間総発電量の約3・5万メガワットアワーは一般家庭約1万世帯の年間使用電力量に相当するとしていた。
計画をもとに東北経産局に変更認定を申請したが、昨年取り下げた。同一地番内に「大船渡第一」「大船渡第二」の各発電設備を設ける内容に対し、現ルールでは同じ地番内にある状態は認められていない。さらに、事業地の一部が釜石市内の同社所有地にもかかっており、飛び地の状態になっていたという。
これを受け、事業者は土地の分筆や、飛び地を解消するための土地購入を実施。希少生物保全などの観点から、太陽光パネル設置の規模を一部見直したほか、造成による道路整備を避け、代替策でモノレールを設置する計画とし、申請していた。
現計画の事業用地は95㌶で、太陽光パネルの面積は、前計画比で実質約4㌶減少して20㌶に。高効率のパネルを採用するなどして、年間総発電量は前計画を上回る約3・8万メガワットアワーを見込む。
出席者からの質疑では、司会者が計画変更部分に限定。しかし、事業そのものの賛成、反対を訴える発言が続いた。
反対の観点では「パネル上から、土に浸透しない水の流れが生まれることで、災害につながるのではないか」「環境アセスメントを継続的にやり、影響を見極めるべき」などと指摘。
賛成を表明した住民は「自然負荷を少なくする取り組みを進め、工夫を凝らしている」「国の認可を受けた、あとは県の部分をクリアして、事業を実施すべき」といった意見を寄せた。
説明会終了後、記者団の取材に対し、自然電力太陽光事業部の髙田尚昌グループリーダーは、県立自然公園条例に基づきすでに認められた計画変更を踏まえ、長期間にわたる評価、査定が予想される県の環境アセスメントは該当しないとの考えを示した。一方、事業者側で規模縮小との認識を示す計画変更の対応について、県側に今後確認をとる方針。現状では最短で今年7月の着工、来年12月末の稼働が見込めるという。
市側は今後、県側の対応を確認し、市議会への説明などを経て、可否を判断する方針。戸田市長は「説明会では反対の方々はその心をアピールされ、賛成の方々は時代の動きをにらんで前向きに受け入れようというように感じた。国の認可が下りたことは大きい。工事の技術的な面でも、前回と何が違うかが詳細に示された」と語った。