住田の新たな名産品に ビール「KAEDE ALE」 きょう販売開始

▲ 29日に販売開始となる「KAEDE ALE」

町産カエデの樹液使用

 

 住田町の住田食材研究会(及川喜悦会長)と陸前高田市気仙町のビール醸造所「陸前高田マイクロブルワリー」(熊谷克郎店主)が商品化を進めてきた、町産イタヤカエデの樹液を使ったビール「KAEDE ALE(カエデエール)」が29日、販売開始される。住田の豊かな森林資源の活用を図ろうとの取り組みで、関係者は「この商品を住田、気仙の新たな名産品に」と期待を込める。(清水辰彦)


地元の食材研究会など商品化

 

 同研究会は、住田食材の魅力と気仙川をはじめとする豊かな景観を発掘、発信して町を元気にしようと平成24年度に設立。地元食材を使った料理の開発、川の景観を活用する川床の試作などに取り組んでいる。
 5、6年ほど前からは、町内に豊富に存在するイタヤカエデを使い、メープルシロップの製造にも着手。シロップを作るには樹液を40分の1ほどに煮詰める必要があるため、同研究会では「濃縮せずに、採取したものを100%使える方法はないか」と考え、ビールに着目し、昨年から商品化を進めてきた。
 イタヤカエデの樹液は、2月上旬から3月上旬にかけての1カ月間採取でき、1本の木から20〜30㍑が見込まれる。ドリルを使って木に深さ3㌢ほどの穴を開け、ホースとポリタンクをつないで放置することで少しずつ樹液がたまっていくが、穴は自然にふさがるため木へのダメージも少なく、「持続可能」な取り組みにもつながる。
 同研究会では「気仙の名産品は気仙で製造を」との思いから、今年3月に陸前高田マイクロブルワリーに樹液約400㍑を持ち込み、これを副原料とするビールの醸造を委託。仕込みは同月8日にスタートし、醸造、瓶詰めなどを経て、29日にマイクロブルワリーの店頭とオンラインストアでの販売が開始される。価格は330㍉㍑で750円(税込み)。
 熊谷店主は「他のビールにはない独特の味わいが生まれた。味は濃くて、飲んだあとはさっぱりする。華やかな香りが特徴で、みそやしょうゆなどと合うかもしれない。いろいろな料理との組み合わせも楽しんでほしい」と話している。
 住田町の住民交流拠点施設「まち家世田米駅」内のレストラン・kerasse(ケラッセ)でも取り扱う予定で、菊地陽介オーナーシェフは「地元のものを地元で飲めるようにしたい」と、商品を通じた活性化に期待する。
 同研究会の吉田洋一副会長は「住田の名物の一つになればとの思いで取り組み、熊谷さんの協力も得て一歩前に進むことができた」と商品化を喜ぶ。