イノシシ被害じわり 目撃数少なくも増加傾向 三陸町では初の捕獲例
令和4年5月12日付 7面

大船渡市三陸町吉浜の大窪山地内でこのほど、オスのイノシシ1匹が捕獲された。地元の市鳥獣被害実施隊員によると、同町内でのイノシシ捕獲は初めてという。イノシシの生息域が年々広がっている中、市内では近年、数は少ないものの目撃情報が増加傾向にあり、中には人里に下りて農地などを荒らす被害も確認されている。シカによる被害に比べればまだまだ少ないものの、イノシシは強い突進力などで人身に被害を与える危険性もあることから、警戒が必要だ。(三浦佳恵)
人里でも警戒が必要
大窪山地内でイノシシを捕獲したのは、市の鳥獣被害実施隊員を務める吉浜地区在住の70代男性。4日早朝、シカ駆除のために同山の元山付近を巡回していたところ、体重約40㌔のオス1匹を見つけ、捕獲したという。
男性は、「おととしから今年にかけて、山内で4〜5匹のイノシシの群れを見たなどの目撃談を聞いていたが、実際に目にしたのは今回が初めて。はじめはクマかと思った」と当時を振り返る。「相手もこちらの姿に気づき、逃げようとしていた。野山を走るスピードが速かった」と話す。
男性によると、吉浜地区では近年、人里である千歳地内の県道や扇洞地内の休耕田で、イノシシが地面を掘り起こした跡が確認されているという。「じわりじわりと人里に迫ってきており、相当数いるのではないか。イノシシは農業被害が増えているとして、県の第二種特定鳥獣(管理計画の対象)にも指定されている。今後、減らしていかなければ大変なことになる」と警鐘を鳴らす。
市農林課では、市民らから寄せられたイノシシの出没情報をまとめている。令和元年〜3年の状況をみると、元年が2件、2年はなく、3年は5件だった。
3年間の合計7件のうち、実際にその姿を目にしたというのは1件のみで、残る6件は地面を掘り起こされたといった痕跡に関する情報だった。中には、人里で田や休耕田を荒らした被害もあったという。
捕獲実績は、元年が1件で2年はなく、3年は2件。昨年の2件は、いずれも日頃市町でのものだった。
同課では「シカなどに比べて農作物への被害はまだ少ないものの、イノシシは人身被害を与えるおそれもある。山中や人が生活する場でその姿、荒らした痕跡を見かけた場合は情報を寄せてほしい」として注意を呼びかけている。