「アートタイル壁画」展示へ 21日からコミュニティHで アーティストが設置作業
令和4年5月14日付 8面

陸前高田市高田町の市コミュニティホールで21日(土)から、日本とシンガポールのアーティストや市民が創作した芸術作品をタイル化して展示する「東日本大震災復興祈念アートタイル壁画展~KIZUNA~」が始まる。12日は、東京のモザイクタイルアーティストのKATSU(かつ、本名・古谷勝彦)さん(58)が作品設置の最終調整を行い、「地域の方々の交流が生まれるきっかけに」と願った。(阿部仁志)
アートタイル壁画は、平成23年の震災の記憶と教訓、同ホール建設にかかる復興支援により生まれた同市とシンガポールとの絆を伝承するもの。国内外のアーティストや同市の子どもたち、横田町の画家・田﨑飛鳥さんらの絵、書、句、立体作品の写真など230点余りをそれぞれ15㌢四方のタイルに加工して並べ、周囲をKATSUさんのモザイクタイルアートで彩る。
壁画展は、国内外で芸術関連イベントを展開する国際総合芸術交流協会(志知正通理事長、東京都)が主催し、同協会から事業委託を受ける㈱20G(トゥエンティージー、笠原善友代表取締役、東京都)が企画・運営。5年間の展示を見据える。
これを前に、10~12日は、同社関係者やKATSUさんらが同市を訪れ、作品の設置作業にあたった。KATSUさんは、全体のバランス調整や、ミリ単位のタイル部品をピンセットで埋め込む繊細な作業などに臨んだ。
KATSUさんが手がけたタイルアートは、陸前高田の魅力ある資源や文化、シンガポールとの友好などを伝えるさまざまな表現がちりばめられている。
夜空や海を連想させる薄紫色を基調に、同市で打ち上がる花火から着想を得た円形の模様を全体に配置。ワカメやカキ、ホタテといった市の海産物、下側中央にはシンガポールの国花のランと、同市の市花のツバキを添えた。ツバキから伸びる七夕まつりの飾りのアザフにはアルファベットの文字があり、陸前高田を構成する八つの町の名前が読み取れる。
上側には、海を回遊して育つイワナやヤマメが中央の陸前高田市章に向かって泳いでいく様子から、「強くたくましく成長した子どもたちが地元に帰ってくる」という願いを込めた。市章の周囲を羽ばたく17羽のカモメは、同市で生まれたプロ野球・千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手の背番号にかけた。
光沢のあるタイルで表現されたアートは、西日を受ける時間帯に美しく輝くという、同ホールの立地ならではの〝仕掛け〟も施された。
KATSUさんは「災害を連想させるものをなるべく避けたり、さまざまな価値観の融和を考えたりと、創作段階では自分の中でいろいろ葛藤した。『あれは何だろう』と集まった人たちの間に楽しい会話が生まれるような、そんな場所になってほしい」と期待していた。
21日は、午前10時30分から同ホール栃ヶ沢公園側の現地で除幕式を開く。誰でも来場できる。