「てんでんこ」合唱で継承 大沢桃子さんの『命の道』 母校の大船渡高生が収録(別写真あり)
令和4年5月27日付 7面

大船渡市赤崎町出身の演歌シンガー・ソングライター、大沢桃子さんのニューシングル『命の道 合唱バージョン』が7月13日(水)にリリースされる。東日本大震災から10年が経過した昨年7月に、災害時の早期避難や命を守る行動の大切さを伝えようとリリースした楽曲『命の道』を、大沢さんの母校・大船渡高校の協力で合唱曲として収録。今月24、25日には、同校で行われたレコーディング作業で生徒たちが歌声を重ね、同曲が「防災伝承歌」として人々の防災意識の高揚につながるよう願いを込めた。(菅野弘大)
7月13日にシングルリリース

レコーディング後には、大沢さんと生徒たちが笑顔で交流する姿も見られた
大沢さんは、これまでのシングル、カップリング曲の大半を、仲村つばき(旧・なかむら椿)名義で作詞・作曲。出身地の岩手県を題材にした楽曲も多数リリースし、震災後は、復興に向けて前進する三陸沿岸を勇気づける曲を作るなどして、地元に思いを寄せ続ける。
『命の道』は、過去の津波被害から、三陸地方の先人たちが教訓として伝え残した「自分の命は自分で守れ」という避難行動を促す言葉〝てんでんこ〟がテーマ。命を未来につなげていくため、過去の教訓を後世に伝承し続けることを〝道〟にたとえた楽曲になっている。
この楽曲をリリース後、大沢さんは『命の道』を合唱曲として歌い広め、世代や地域を超えて『てんでんこ』の教えを残すことで、今後の災害への備えと防災意識を高め合うきっかけにしようと、「『命の道』つなげるプロジェクト〜防災伝承歌〜」を展開。今回は同プロジェクトの一環として、大沢さんの出身校である大船渡高に合唱への協力を依頼し、参加が決定した。
24、25の両日、同校で行われたレコーディング作業には、音楽の授業を選択している1、2年生約100人が参加。大沢さんや所属事務所の㈱ビーエスプロダクション、今回のCD発売元のレコード会社・㈱徳間ジャパンコミュニケーションズの関係者らが生徒たちをサポートした。
生徒たちは先月から、レコーディングに向けて音楽の授業の中で合唱の練習に取り組んでおり、ソプラノとアルトの混声2部合唱で「てんでんこ、てんでんこ」と磨いてきた歌声を合わせた。大沢さんも、声の強弱や抑揚などの細やかなアドバイスを送りながら、真剣な表情で歌う生徒たちを見守った。
大沢さんの朗らかな人柄に、生徒たちの緊張も徐々に解け、会場には笑顔があふれた。レコーディング後には、和やかに談笑したり、大沢さんとハイタッチならぬ〝腕タッチ〟をするなどして交流を深めていた。
大森康心君(1年)は「震災は悲しい出来事だけど、この歌は、命を守りつなげていく思いや希望が詰まった前向きな歌だと思った。うまく歌えたかは分からないけど、多くの人に勇気を与える合唱曲になってほしい」と願いを込めた。
生徒たちの澄んだ歌声に「希望を感じた。感激した」と心を打たれた様子の大沢さん。「災害から多くの命が救われるようにと制作した歌を、三陸の地から発信できることがうれしい。母校の皆さまの協力もあり、歌で防災意識を伝えていく責任が生まれた。まずは歌を口ずさんで、災害への備えにつなげてほしい」と期待。「コロナ禍で、『命の道』を地元で披露できておらず、歌を届けたい思いは膨らんでいる。古里あっての自分。今後も地域のための活動を続けていきたい」と気持ちも新たにしていた。
大沢さんは今月中にレコーディングに臨み、生徒たちの歌声とミックスして『命の道 合唱バージョン』を完成させる。