■視点/住田町の中学校統合㊤ 町内1校化の協議始動 少子化で「やむなし」の状況

▲ 今月19日に設置された学校統合推進協議会

 住田町立世田米、有住両中学校の統合に向けた動きが具体化してきた。昨年度、町教委では教育審議会に「今後の小中学校のあり方」について諮問し、審議会では議論の末に「中学校は統合することが望ましい」「小学校は時機を待って統合を」と答申。これを受け、町教委が両地区の保護者らを対象に今年4月に開いた説明会では、顕著な少子化も背景として、出席者からは中学校統合への異論が聞かれず、教委が今月19日に学校統合推進協議会を設置するに至った。「町内1校化」への議論が、今後本格化していく。(清水辰彦)

 人口減少を背景とした学校統廃合は、全国的に増加している。文部科学省によると、平成元年から10年までの公立小学校の増減数はマイナス557校で、中学校は81校減った。11年から22年には「平成の大合併」もあり、小学校2231校、中学校491校が統廃合で校史を閉じた。
 さらに、23年から30年では小学校2006校、中学校494校がなくなり、直近の統合事例は令和元年度から3年度の3年間で437件となっている。
 住田町の人口は昭和30年の約1万3000人をピークに減少の一途をたどっており、今年4月末時点では4954人にまで減った。0~14歳の年少人口は400人を割っている。
 同町の中学校は、昭和46年に下有住、上有住、五葉の3校が統合して有住が開校し、同59年に世田米が大股を統合して以来、2校体制が続いてきた。
 中学校の生徒数は有住中誕生のころの700人台をピークに右肩下がりとなっており、令和4年度当初では有住中35人、世田米中62人で100人を割った。有住の生徒数は気仙地区でもっとも少ない。
 同町では少子化が急速に進んでいる。こうした中、町教委は昨年7月、町教育審議会に対して「今後の小中学校のあり方」について諮問。審議会は答申について▽現在のまま▽小学校のみ統合▽中学校のみ統合▽小中学校とも統合▽小中一貫校設置──のいずれかとすることとして、議論を重ねてきた。
 審議会席上、委員や保育園、小中学校の保護者、地区公民館長らからは、部活動や学校行事の充実、生徒間の競争力向上などの観点から、「中学校は統合やむなし」との共通認識がみられた。
 一方、小学校の統合に関しては、世田米、有住両小学校間の距離を踏まえ、「統合していずれかの校舎を使うにしても、登下校に長い時間がかかり、子どもたちの負担となる」との意見を踏まえ、「小学校の統合は時機を見て判断してはどうか」との方向性で一致。
 計5回にわたる会議の結果、「児童・生徒は、学校での集団生活を通し、多様な人間関係を体験し学ぶことで社会性や集団性を養い、成長を遂げていく。そのため、小中学校の多感な時期にさまざまな見方・考え方を持っている多くの友達と出会い、互いに学び合い、高め合うなど、切磋琢磨できる教育環境が必要と考えられる」などと指摘。
 そのうえで、中学校については「統合することが望ましい」、小学校については児童の発達段階を踏まえた十分な策を講じる必要があることから「時機を待って統合することが望ましい」と結論づけ、町教委へと答申した。
 約40年間にわたり続いてきた町内2中学校体制。特効薬はなくブレーキがかからない少子化を大きな要因として、1校化という転換点を迎えることとなった。