7月に「希望のトランペット」 3年ぶりに現地開催 日本の第一人者・杉木峯夫氏迎え奇跡の一本松ホールで

▲ 「人間の生の声に近いトランペット演奏を通じ、お客さんとコミュニケーションを取りたい」と杉木さん㊥は来場を呼びかける(写真は令和元年の演奏会)

 世界的なトランペット奏者・杉木峯夫さん(77)=東京藝大名誉教授、日本演奏連盟専務理事、日本トランペット協会理事長=らによる「響け!希望のトランペット~陸前高田市民と紡ぐステージ~」は7月24日(日)、陸前高田市高田町の市民文化会館「奇跡の一本松ホール」で開催される。新型コロナウイルス感染拡大の影響により2年連続リモートで実施され、出演者たちが現地で演奏するのは令和元年以来3年ぶりとなる。杉木さんは「トランペットを通じて地元の方たちとコミュニケーションを取れるのが楽しみ。同じ空間・時間を共有する皆さまとともに、よい演奏会にしたい」と、市民との再会を心待ちにしている。(鈴木英里)

 

 演奏会「響け!希望のトランペット」は、東日本大震災被災地の陸前高田から鎮魂と平和の祈り、未来への希望を発信しようと、陸前高田市を中心に活動する任意団体「チームとも・いき」(西田邦昭代表)と市民らで構成される実行委員会が主催。杉木さんの呼びかけに賛同したプロ・アマのトランペッターが集い、令和元年5月に高田町のアバッセたかたで初開催されたが、昨年、一昨年は感染拡大防止のためオンライン上で行われた。
 4回目となる今回は、第1部に地元から陸前高田市民吹奏楽団、民謡の「鳴美会」、踊りの「見咲樹会」が出演する。
 第2部では杉木さんが指揮を執り、気仙在住・出身者を含むトランペット奏者ら約50人が『ふるさと』『花は咲く』などを演奏。杉木さん自身も『フライデー・ナイト・ファンタジー』でソロパートを担当する。今後の感染状況によってはリモート演奏会に切り替わる可能性もあるが、初回以来となる現地開催に、陸前高田訪問を念願していた出演者たちも「ようやく」と意気込んでいるという。
 大震災直後の平成23年5月、東京オペラシティでチャリティーコンサートを開くにあたり、津波で母と祖父母、叔母、いとこを亡くした高田町出身の高校生を招き、ともに演奏した時のことが陸前高田との結びつきの原点という杉木さんは、学校への楽器贈呈といった数々の被災地支援を行ってきた。
 同年7月、大船渡市に停泊した客船・飛鳥Ⅱで演奏会を開いた際、鑑賞した被災者らがお別れの時にずっと手を振ってくれたことも忘れがたいという杉木さんは、「そういう思いのある場所を再訪できるのがうれしい」と喜ぶ。
 「体の一部である唇の振動によって音を出すトランペットは、どの楽器よりも肉声に近い。僕たちの思いが演奏を通じてお客さんに伝わり、お客さん側からもいろんな感情が電波のように返ってくる。そのコミュニケーションはリモートではかなわない。生の演奏会でやっと皆さまと向き合えることが、私たち演奏家にとっては何よりの楽しみ」と杉木さんは語る。
 今回は初めて入場料を徴収する。前売りチケットは大人1000円、小中高生500円で、高田町の商業施設アバッセたかた専門店街インフォメーションで取り扱う。
 杉木さんは「震災のことを考える一つのきっかけとして、今後も足を運び、発信していきたい。料金をいただくのは大変心苦しいが、皆が手弁当で参加する中、最低限の経費分だけご協力をお願いできれば。短い時間だが、このコンサートをお客さんと一緒につくりあげたい」と来場を呼びかける。
 コンサートは午後2時開演。問い合わせは西田代表(℡090・9106・3527、メール・h.kibou.t@gmai.com)へ。