ハイカーらの休憩場所に 綾里・不動滝にあずまや 宮大工や住民有志が整備(別写真あり)

▲ 地域住民が力を合わせ、あずまやを整備

 大船渡市三陸町綾里にある市指定名勝の不動滝で、地元の宮大工や住民有志が、あずまやの建造を進めている。数十年前にもあったが朽ちてしまい、近年はみちのく潮風トレイルを巡るハイカーらの立ち寄りが増えていることから、奉納や地域活性化の思いを込めてボランティアで作業。29日に完成する予定で、関係者は憩いの場としての活用に期待を込める。(佐藤 壮)

 

きょう完成へ

 

 作業は22日に始まり、28日は野形地域に工房を構える宮大工・坂本文夫さん(67)や地域住民ら約10人で、棟上げ作業などを行った。あずまやは2・1㍍四方で、10人程度が休憩などで利用できる構造。29日は、いすやテーブルなどを整備して完成させ、野形町内会(森田治夫会長)による環境美化活動も行われる。
 不動滝は、向かって右側にある男滝と、左側の女滝の二つからなり、その中間の岩窟に不動尊がまつられていることからこの名で呼ばれてきた。高さ約15㍍の男滝から垂直に流れ落ちる光景だけでなく、鳥居やほこら、太鼓橋もあり、神聖な雰囲気がただよう。
 流れ落ちてくる澄んだ水は「岩手の名水20選」にも選ばれる。毎年、6月の旧端午の節句は不動明王の縁日にあたり、多くの参拝者が訪れるほか、漁業者の信仰も厚い。
 近年は、みちのく潮風トレイルのコースとしても人気を集める。綾里駅から綾里街道を歩き、峠を越えて陸前赤崎駅などを目指すハイカーら立ち寄る半面、付近には休憩場所がなかった。
 かつては女滝の下付近にあずまやがあったが、数十年前に朽ちてしまい、平場だけが残っていた。地元外からも来訪が増える中、工房などでハイカーらと交流を深め、市内でもあずまやの建造実績がある坂本さんらが中心となり、準備を進めてきた。
 地元のヒノキ、スギ材で建造し、朽ちても自然にかえるシンプルな構造だが、今後30年以上はもつという。屋根の下に位置する大瓶束や懸魚には、坂本さんによる彫刻が光る。
 完成後は、誰でも自由に利用できる。
 坂本さんは「昔は節句に合わせた地域の野球大会が終わった後に、あずまやで飲み食いをしたものだった。みんなの力や奉納に恵まれて、何とかここまできた。憩いの場となれば」と話している。