情報発信 さらに連携を 防災学習ネット ワーク運営協 未就学児教育や観光回復の視点も
令和4年6月1日付 1面

大船渡市内の津波伝承・防災学習の推進に向けた市防災学習ネットワーク運営協議会(会長・柴山明寛東北大学災害科学国際研究所准教授)が5月31日、大船渡町のおおふなぽーとで開かれた。一昨年に策定した計画の実現に向け、より連携した形での情報発信や各施設の利用促進などを見据えた本年度事業を確認。コロナ禍で観光客が大きく落ち込んだ中、回復につながる取り組みや未就学児の防災教育といった視点が浮き彫りとなった。(佐藤 壮)
同協議会は市や教育団体、学識経験者、各施設関係者ら13人で構成し、今年3月以来の開催。委員11人に加え、市防災管理室職員らが出席した。
令和4年度事業では▽情報発信▽利用促進▽震災の記憶や教訓等の記録・保存▽施設・団体等の連携──などを掲げる。東日本大震災の経験や教訓の伝承・防災学習の推進に向け、防災学習ネットワークに関する津波伝承施設などで行われている取り組みを発信するとともに、相互に連携・協力する事業やイベントを支援する。
情報発信では市内の津波伝承施設などを紹介するため、各団体が連携しながらパンフレットを作成。市外来訪者でも施設などの場所が分かりやすいように地図上で位置を表示するとともに、ネットワーク関連施設・団体などの概要を掲載する。
市内小中学校での活用も見据え、教育委員会と連携。出前授業に加え、展示パネルや動画など防災学習で使用できる素材の貸し出しも行う。津波伝承施設・震災遺構などを活用したモデルコースの設定を行い、市ホームページなどに掲載することにしている。
また、インターネットで公開している市防災学習アーカイブスは現在、震災をはじめ過去の地震・津波などに関する記録や石碑の情報などが20件程度登録されている。各施設・団体が追加登録することで50件程度の発信を目指す。
市内外からの問い合わせに対する施設・団体などの紹介を行うとともに、施設間の展示物などへの貸し借りや各施設・団体などが行うイベントへの協力など、横断的な連携に向けた調整も担う。
計画では、津波伝承・防災学習のゲートウェイとなるおおふなぽーとに、各施設に足を向けるきっかけとなる案内が期待されている。ネットワーク全体の活動を支えるコーディネート業務や必要経費などについて協議も行う。赤崎町の防災学習館に関しても、7月までに館内ガイドの取り扱いなどを定め、必要経費は9月補正予算で確保することにしている。
委員からはパンフレットに関して、小中学校でタブレット端末での学習機会が増えている中、デジタル活用の提言も。「未就学児や小学校低学年に防災について話すことで、生涯残っていくのではないか。積極的に進める活動が必要では」との意見も出た。
協議会は年度内に2回程度開催を計画。本年度事業の進捗を確認するとともに、次年度以降の充実に向けたアイデアなども取りまとめることにしている。
市が2年度にまとめた防災学習ネットワーク形成基本計画は、津波災害や避難生活の伝承、既存施設の活用・連携などを基本理念に掲げている。おおふなぽーとを中心とし、防災学習・津波伝承関連施設には、市立博物館や大船渡津波伝承館(おおふなぽーと内、非常設)、市魚市場展示室に加え、赤崎町の漁村センターを活用した防災学習館も入る。
会議で柴山会長は「大船渡市の観光客は、コロナ禍で令和元年から2年度の落ち込みは45%と大きい。(東日本大震災津波伝承館などがある)陸前高田市は9%減でとどまっている。防災だけではないだろうが、施策としてうまくいっていない面があるのでは。防災学習ネットワークでも盛り上げていかなければいけない」などと指摘。
運営協の構成機関にとどまらず、より幅広い機関の参画にも期待を込める。「運営協議会を構成している団体だけでなく、もっと多くの人々に入ってもらう必要がある。今後はオブザーバーを積極的に呼び、幅広く話を聞くことができれば」としている。