ウニ畜養 漁期外の商品化目指す 本年度は越喜来漁協で 県委託の収益向上事業開始(別写真あり)
令和4年6月18日付 7面

県は本年度、大船渡市三陸町綾里で昨年度実証に成功したウニの畜養事業を、同町の越喜来漁協(舩砥秀市代表理事組合長)に委託し、17日に開始した。湾内で大量発生し、実入りが悪くなっている「やせウニ」を漁港内に移植して人工的に餌を与え、天然のウニが出荷できない日や漁期外の9月ごろに商品化を目指す。漁協の新たな収益力を生み出すとともに、磯焼けが深刻化する海中のウニを間引くことで藻場再生にもつなげる。(八重畑龍一)
同日は県大船渡水産振興センターや同漁協の職員、ダイバーら10人ほどが参加し、漁船で越喜来湾内のウニ約150㌔分を採捕。越喜来地区の大部分が防波堤で囲われた漁港内に移植した。21日(火)までに計1000㌔のウニを投入する。
餌として、ウニを移植した漁港内に養殖コンブをまき付けたロープをつるす。人工的に週1回、約700㌔のボイル塩蔵ワカメも与え、実入りや色合いの向上を図る。
「夏至」の21日を過ぎてからは、夜間は漁港の周りにLED(発光ダイオード)ライトを点灯。24時間光を当て、夏が長く続いているとウニに錯覚させることで、通常は盆前に身溶けが進み、商品価値がなくなる時期を遅らせ、旬の時期を長く保たせる効果を狙う。
9月までの1期目の出荷終了後、10月上旬に再びウニを移植し、2期目は年末や年明けの商品化を狙う。
畜養事業は、海中で餌となる海藻が不足し、実入りの悪いウニが増加していることを受け、新たな畜養・出荷モデルの構築や海中の生息密度の適正化につなげる「黄金のウニ収益力向上推進事業調査業務」として、県が令和2、3年度の2年間、気仙では同町の綾里漁協(和田豊太郎代表理事組合長)に委託していた。
綾里では閉鎖された畜養池の中で実施。LEDライトも用い、3年度は天然ウニの漁期外で県内では初となる9月、1月などの出荷に成功。通年出荷実現への一歩として、関係者からは期待の声が上がった。夏季の調査では、実入りの状況を示す生殖腺指数が畜養を始めた昨年6月から出荷した同9月までに3倍近くアップした。
同センターの及川光水産業普及指導員は「綾里は閉鎖された池の中だったが、他の地域で漁港内という環境でもできるのか再現性を確認したい。事業化を見据え、綾里の調査からウニの量、規模も拡大し、採算性を追求していく」と話す。
舩砥代表理事組合長は「綾里では努力のかいがあったようで、越喜来湾でも磯焼けが厳しくなっている中、収入源になるよう事業化に取り組みたい。天候に左右されず計画的に出荷できるようになり、市場価値が出ればいい」と期待する。
綾里漁協では本年度からは漁協独自で畜養を行う。