十分なクマ対策を 気仙でも出没増加 住田町では物的被害も
令和4年6月19日付 7面

今年も人里へのツキノワグマの出没が相次いでいる。先月は、県内でクマによる人身被害が5件発生し、6人がけがを負ったことから、県は「ツキノワグマの出没に関する注意報」を発令。気仙地区での人的被害発生はないものの、6月に入ってからは、民家敷地内への出没が数件あったほか、各市町や警察などに目撃情報が多数寄せられている。被害に遭わないためにもクマに関する知識や十分な対策が必要だ。(菅野弘大)
例年、冬眠明けで活動期を迎える4月から目撃が増えるツキノワグマ。県内の山林のほとんどが生息地とされ、近年は餌となる堅果類の凶作などが影響してか、人里への出没が増加している。
県のまとめによると、今年の全県での出没は、4月110件、5月353件と推移。昨年同期と比べるといずれも減少しているものの、人的被害は今月16日現在で10件と、昨年よりも増えている。
気仙でも、4月から徐々に目撃が増え始めている。3市町の担当課によると、16日現在の出没件数は、大船渡市26件、陸前高田市14件、住田町11件で、人的被害はないが、肥料袋が荒らされるなどの物的被害が数件確認されている。
地域別にみると、大船渡市は赤崎町が9件、立根町と三陸町綾里が各4件、同町越喜来が3件、同町吉浜と末崎町が各2件、猪川町と大船渡町が各1件。5月には、赤崎町の清水・合足地内と三陸町綾里の小路地内で同じ個体と思われるクマの目撃が相次いだことから、市が合足地内にわなを仕掛けたところ、同18日に成獣1頭がかかり、捕獲した。最近は、立根町の三陸沿岸道路・大船渡インターチェンジ付近での目撃が増加しており、注意を呼びかける。
陸前高田市での目撃は、竹駒町8件、横田町3件、米崎町2件、小友町1件。竹駒町では今月1日の正午、民家敷地内に体長約1㍍の成獣1頭が出没。ミツバチの巣箱に手をかけているクマを住民が発見し、市に通報した。住民や巣箱に被害はなかった。
住田町では、上有住で6件、世田米で5件の目撃情報があった。上有住地内では1日夜、民家敷地内にあった肥料袋が荒らされる被害があったほか、同地内でビニールハウスの中に置いていた肥料袋が破られる被害も確認された。
県内での被害増加を受け、県は今月1日付けで「ツキノワグマの出没に関する注意報」を発令し注意を喚起。
山に入る際は▽入山地域の出没、被害情報の事前確認▽複数人での行動、鈴やラジオ等の音の出るものの携行▽夜間、明け方、夕方の入山を避ける▽撃退グッズ(忌避スプレー、鉈等)の携帯──といった対応を求める。
人里においては▽廃棄野菜や生ごみ、コンポストの管理を適切に▽農地周辺のやぶを刈り払い、見通しの良い環境の整備▽電気柵の設置▽庭先果樹は適期が来たら速やかに収穫▽屋外やクマが侵入できる納屋に果物、穀物、ペットフードを保管しない──などの対策を呼びかけている。