東京・高円寺の三陸SUN「食卓にいいもの」浸透へ 店舗移転1年 来店客増 大船渡産など対面販売で奮闘
令和4年6月19日付 1面

大船渡産をはじめとした三陸の特産品販売や、移住相談などを行う東京都杉並区高円寺のアンテナショップ・三陸SUNは、店舗移転から1年余りが経過した。大船渡市の㈱地域活性化総合研究所(新沼謙治代表取締役)が運営し、スーパーや百貨店などとの差別化を図りながら食品を中心とした販売に力を入れ、令和3年度は来店客数が大幅に増加。今後は対面販売を通じて得た〝首都圏の声〟を大船渡の事業者にフィードバックする取り組みや、さらなる産品アピールの役割に期待が高まる。(佐藤 壮)
個人客向けに工夫も
「この商品はリピーターが非常に多くて人気です。違う種類も食べ比べてみては。通販もしています」
今月上旬、レジに立つセンター長の福山陽平さん(30)が笑顔で語りかけると、客は手にした商品に加え、勧められた一品も購入した。その後も途切れずに来店があり「先日食べたらおいしかった」と、イカの刺し身を購入する姿も。幅広い世代が訪れ、言葉を交わしながら特産品を囲む光景が定着した。
三陸SUNは、首都圏在住の大船渡市出身者をはじめ、同市にゆかりや関心のある住民が交流を図り、特産品や観光のPRに加え、移住相談などもできる拠点として、市が平成29年3月に杉並区高円寺南地内にオープン。運営は同研究所が担ってきた。
当初はJR高円寺駅から徒歩5分の位置で、ランチも提供。昨年3月、店内での飲食対応を見直したことなどを受け、東京メトロ丸ノ内線東高円寺駅近くの青梅街道沿いに移転した。
店舗面積は小さくなった一方、閑静な住宅街が広がる文教エリアで、近くにはバス停もあることから、多くの住民らが行き交う。物販を中心に展開し、3年度の来店客数は約1万3000人で、2年度の5000人台から大幅に増加。コロナ禍前の旧施設では、年間6000~7000人で推移していたという。
福山さんは「東高円寺の方が近くに一軒家が多く、質の良い品が選ばれる傾向にある。周囲にスーパーがないので、つまみの一品として買う人も多く、購入単価も高い。新宿も近いので、百貨店にない品ぞろえも意識している」と語る。
現在は三陸の事業者による350~400商品を取り扱い、このうち、大船渡産の売れ行きが3~4割を占める。常に販売ランキング上位に入るのは、大船渡の小規模事業者が製造した塩辛。水産加工品の人気が高く、口コミで広がるケースも目立つという。徒歩や自転車での来店が多く、「食べきり」ができる少量の商品充実にこだわってきた。
首都圏でも高齢化や孤食化が進む中、時代に合った商品開発のヒントを得る場にもなっている。客の反応や感想を、大船渡をはじめとした三陸の事業者にフィードバックする役割にも期待が集まる。
福山さんは「お客さんに商品について聞かれたり、頼ってもらえたりする機会が増えた。でも、まだまだ軌道に乗っていない。もっと頑張らないと。普段よりもちょっといいものや食卓が豊かになるものを、これからも大切にしたい。季節のフェアなどにもアプローチできれば」と見据える。
店舗住所は東京都杉並区和田3丁目59の9第三加部ビル1F。営業時間は午前10時~午後6時。毎週月、火曜日定休。電話番号は03・6454・6139。