温故知新で地域に誇りを 元地区公民館長の佐藤さんが「続『日頃市歴史物語』」発刊 老人クラブ会員らに寄贈
令和4年6月21日付 7面

大船渡市日頃市町字関谷の佐藤善士さん(85)がこのほど、地元の歴史をまとめた『続「日頃市歴史物語」』を発刊した。郷土の古文書や各種資料を丁寧に読み進め、町内めぐりを重ねてきた中、ふるさとのルーツや自然風土を後世に残そうと地道に編集。19日には、地元に暮らす人々の温故知新や若い世代への記憶継承を願い、市老人クラブ連合会日頃市支部(猪股光暉支部長)の会員向けに約180冊を寄贈した。(佐藤 壮)
小中学校で教べんをとり、大船渡一中校長を最後に定年退職し、日頃市地区公民館長などを歴任した佐藤さん。郷土史に造詣が深く、平成24年には古里の通史や伝承、郷土芸能などをまとめた『日頃市歴史物語』を発刊した。
その後も、まとめてきた資料に、日々目を通してきた。「自分の生まれ育った故郷が、生活の支えとなっている」と日頃市の郷土史にこだわり続け、地元に誇りを持ってほしいと『続「日頃市歴史物語」』の編集にあたった。
通史の概略に始まり、方言、産業、民話と信仰、伝承などを網羅。古文書などに残された情報を解読し、分かりやすくまとめた。
伝承の章では、同町出身の大相撲力士、五葉山卯太郎を紹介。卯太郎は明治27年に下鷹生の中村家に生まれた。185㌢余りの恵まれた体格で、気仙でも盛んだった草相撲では無類の強さを誇ったという。20歳の徴兵検査を機に角界入りを勧められ、名門・出羽ノ海部屋に入門。十両三枚目まで昇進し、29歳で土俵を降りた。
引退後は妻の古里高知で過ごし、海を渡って釜山で割烹旅館を開業。帰国後も高知で過ごしたが古里への思いは強く、昭和43年に鷹生の生家隣りに墓を建立。同46年に亡くなったあと、この墓に分骨されて眠っている。
また、明治政府が財政基盤を確立するため行った、地租改正の資料も掲載。町内の旧家に残る文書を7〜8年がかりで読み解いたといい、字名別の田畑や宅地、官林などの面積について紹介している。
昭和53年度に予備調査が始まり、平成19年に完成した鷹生ダムに関しては、湖底に沈む住戸が移転する経緯や、建設とともに郷土づくりの一環で発足した「座・ひころいち世話人会」の取り組みも総括。今後の地域展望も盛り込んだ。
表紙写真には、宿地域にまつられている「六地蔵さま」を用いた。佐藤さんは「時間がある時に手にとってもらい、生涯学習に役立ててもらえれば」と語る。
19日には、同地区公民館で市老連支部の全会員世帯分約180冊を寄贈。受け取った副支部長の新沼國男さん(79)は「これまでもさまざまな場で講師を務めていただいた。昔を知る人が少なくなっている。改めて勉強する機会になれば」と感謝を込めた。
A4判201㌻で、印刷は盛町の㈱大昭堂印刷所。300部を作成し、市立図書館や同地区公民館、町内の各地域公民館にも贈呈した。本に関する問い合わせは、佐藤さん(℡28・2636)へ。