農業振興へ新たな一歩 岩大クラフトビール部が大麦の初収穫実現 横田町で試験栽培 (別写真あり)

▲ 横田町で大麦の収穫作業にあたった佐藤さん(左端)ら岩大クラフトビール部員

 岩手大学の学生でつくる「岩手大学クラフトビール部」(坂下舞桜代表)は、陸前高田市横田町の農家の畑で、ビールの主原料となる二条大麦の試験栽培に取り組んでいる。寒冷地での品質管理が難しいとされるビール麦の栽培や製品化の成功モデルをつくることで、県内の地域振興や農業の課題解決につなげたい考え。27日は、部員らが初となる大麦の収穫にこぎ着け、新たな一歩に手応えをつかんだ。(阿部仁志)

 

 同部は、同大4学部の1〜4年生17人で構成。大学で培った技術や研究に基づき地域課題の解決を目指す同大の学生活動支援プログラム「学内カンパニー」制度を利用し、昨年4月に発足した。
 大きな目的は、県内で拡大する遊休農地の利活用。ほかの作物と比べて栽培の手間が少ない麦畑を開拓することで、農業の担い手不足や高齢化へ対応する。大規模化できれば新たな雇用創出への期待も生まれる。
 国産ビールに使われている主原料の二条大麦は多くが外国産といい、地産の原料でビールを造ることで付加価値をつけることができる。原料の調達と加工、消費を地元のブルワリーや農業法人などで回すことができれば、経済の好循環にもつながるといった〝効果〟を見据える。
 二条大麦は寒さや湿気に弱く、県内での栽培例は極めて少ない。部員らは、約10年前に東北農業研究センターが開発した耐寒性のある「小春二条」に着目し、冬も温暖な気候が続く同市での試験栽培に踏み切った。
 ミニトマトを栽培している農家・杉山大樹さん(48)の協力のもとで畑5㌃余りを借り、昨年11月に小春二条の種をまいた。月に1度のペースで現地を訪れながら成長を見守り、今回の収穫を迎えた。
 作業には、同部初代代表の佐藤稜さん(農学部4年)ら部員4人と杉山さんが参加。無事に穂をつけた麦を手鎌で刈り取り、脱穀作業まで行った。
 杉山さんは「耕作放棄地の有効利用につながるいい取り組みだと思う。収穫時期などについてまだ試行錯誤は出てくると思うが、若者たちの頑張りが実を結ぶよう、これからも協力したい」と語った。
 とれた麦は今後大学で乾燥、精麦の工程を踏んだうえ、同部と連携する盛岡市のベアレン醸造所㈱に出荷する予定。冬までにオリジナルビールが完成する予定で、試飲会の実施も見込む。
 陸前高田が最初の試験栽培地になったのは、同大の学生が東日本大震災後に陸前高田で支援活動を展開していたことも関係する。佐藤さんは大学1年時から同大の陸前高田応援チーム「岩大E_code(イーコード)」に所属し、同市の復興に関心を寄せていた。
 佐藤さんは「農家が減っている今の状況で、県内の農業を維持するには一人あたりの作付け面積を増やすしかない。そうなったとき、人手が少なくても生産できるビール麦が、陸前高田や岩手の新しい産業のヒントになると考えた」と語る。
 今後は内陸でのほ場開拓や、自治体と連携した本格的な産業化も視野に入れる。「まずはビールの完成を目指し、量産化できるよう、今後も活動を進めていきたい」と意気込む。