「気仙丸」利活用 触れ合いや掘り起こしを  船内見学や勉強会開催へ 推進協が総会

▲ 4年度計画を決めた総会

 大船渡商工会議所(米谷春夫会頭)が所有する木造千石船の復元船「気仙丸」の利活用推進協議会は29日、同商議所で令和4年度総会を開き、事業計画などを決めた。触れ合いや技術伝承、歴史的価値の掘り起こしなどを進める方針。具体的には、船内見学会の実施や勉強会の開催、「ふね遺産」への申請などを見据える。野外劇場プロジェクト事業も織り交ぜ、幅広い角度から活性化を目指す。(佐藤 壮)

 

ふね遺産登録や劇場事業も

 

地域活性化につながる利活用充実が求められている気仙丸

 協議会は商工会議所や市、市観光物産協会、気仙船匠会、㈲大船渡ドック、㈱キャッセン大船渡で構成。伝統技術で復元され、昨年から大船渡町内で陸揚げ展示が始まった気仙丸の保存・管理や利活用の推進を図るとともに、建造の技術伝承、記録、観光振興も進めることで地域活性化につなげようと、今年1月に設立された。
 総会には、関係者13人が出席。会長を務める米谷会頭は「大船渡の財産、集客の目玉として生かしたいが、難しい面が多々ある。いろいろとご協議いただきたい」と述べた。
 議事では3年度事業報告に続き、4年度事業計画案や収支予算案を協議。いずれも、原案通り決定した。
 計画によると、ふれあい事業として、建造や陸揚げ時の修復に携わった気仙船匠会メンバーの解説を受けながら船内見学を行う機会をつくる。パネル展や建造時の道具展示、紹介動画の上映も検討し、いずれも秋の開催を見据える。
 技術伝承・記録事業では、船大工に関する技術・技能伝承を目指し、学術研究者らを講師に迎えた勉強会を計画。市民やガイド関係者の参加を想定し、歴史的価値の認識を深めるとともに、勉強会の様子を収録するなどしながら、記録動画の作成に取り組む。
 歴史的価値の掘り起こしに向けては、文化的遺産として次世代に伝える観点から、公益社団法人日本船舶海洋工学会が平成28年度から行っている「ふね遺産」の認定を目指す。申請期間は今年10月上旬~12月上旬で、結果発表は来年5月ごろという。
 さらに、スマートフォンを活用し、船内の様子が分かるVR動画を作成。気仙丸の情報をQRコードから入手できるシステムづくりにも取り組む。
 他団体との連携にも力を入れ、市観光物産協会やLOVE大船渡プロジェクト実行委とともに「おおふなとの灯(あかり)」事業を12月中旬から1カ月程度行い、展示エリアのライトアップなどを通じて、にぎわいを図る。
 さらに、三陸国際芸術祭などを運営する、同市のみんなのしるし合同会社と連携。秋ごろに気仙丸を「劇場化」して、子どもたちが親しめる空間づくりも進める。
 総会では出席者から「市民ぐるみで努力する機運づくりを」「公共車両に船体の絵柄を描くことはできないか」「船体に上がるための安全な階段・はしごも必要」といった声が寄せられた。
 船体の劣化を防ぐ建屋に関しては、引き続き財源確保策などを検討。市街地の活性化につながる展示スペースの活用も探る。