2022参院選岩手選挙区/広瀬氏 激戦制し初当選 自民 30年ぶり議席奪還 本県初の女性参院議員に

▲ 当選確実の一報を受け、支持者らと喜びを分かち合う広瀬氏(中央)

 第26回参議院議員選挙は10日、投開票が行われ、現職と新人の5人が立候補した岩手選挙区(改選数1)は、自民党公認の新人で公明党が推薦する広瀬めぐみ氏(56)=盛岡市=が26万4422票を獲得し、立憲民主党公認の現職・木戸口英司氏(58)=花巻市、1期=を2万2248票上回るなど4候補を破り、激戦を制して初当選した。自民は平成4年以来、30年ぶりの議席奪還を果たし、本県初の女性参議院議員が誕生することとなった。同選挙区の投票率は55・38%で、令和元年前回選の56・55%を1・17ポイント下回った。(清水辰彦、八重畑龍一)

 

木戸口氏「共闘」実らず

 

 激戦を制した広瀬氏は盛岡市出身で、昨年11月に出馬表明後、休みなく県内を回り、知名度アップを急いだ。弁護士として21年間の経験を踏まえ、「働きながら子育てしやすい環境をつくる」と、本県の人口減少や女性・若者の人口流出抑制対策、弱い立場になりがちな女性・子ども政策の立案などを軸に訴えた。ウクライナ情勢を踏まえた国防の強化も呼びかけた。
 県内を回る中で、農林水産業振興やILC(国際リニアコライダー)誘致など、演説では徐々に本県の地域に即した課題解決への意欲も語るようになった。
 鈴木俊一財務相(衆院岩手2区)や藤原崇財務大臣政務官(同3区)と連動し、政権与党の候補として「公共事業予算の確保に取り組む」とアピール。党所属県議や市町村議、公明党の支援も受け、組織戦を展開し、攻勢を加速させた。
 気仙でも鈴木財務相の地区後援会(鎌田和昭会長)や党支部がフル回転し、新人として懸念された知名度不足を補った。農林水産業や建設業者らの支持が広がり、女性は一部、党派を超えて取り込んだ。3市町で木戸口氏を上回り、大船渡市で2661票差、陸前高田市で497票差、住田町で325票差をつけた。
 鈴木氏の地盤の沿岸、県北を合わせた衆院2区全体では約3万2000票の差をつけた。3年前の前回選で自民候補が大きく負け越し、全県で競り負ける要因となった最大票田の盛岡市でも、地元の人脈を生かして着々と票を切り崩した。
 木戸口氏にリードを許したのは同氏の出身地・花巻市、立民の小沢一郎氏(衆院比例東北)のお膝元である奥州市、北上市、平泉町の衆院3区4市町のみ。同2区のリードを保って自民が30年ぶりの議席を獲得し、本県では初の女性参議院議員の座を射止めた。
 木戸口氏は現職としての経験と実績をアピールし、かつて政務秘書を務めた達増拓也県知事の全面支援を受けて訴えを展開したが、達増氏の支持基盤である盛岡市でも接戦に持ち込まれた末、約1500票差をつけられた。
 共産、社民各党県組織の支援を受け、国民民主党の支持団体も推薦するなど、実質的には野党共闘態勢を整えたはずだった。しかし、今回選は野党各党本部間の微妙な軋轢があり、党推薦を得られず、6年前や3年前に「野党共闘源流の地」をアピールし、野党勝利へ弾みをつけた各党代表者そろい踏みの光景は最後まで再現できず、実態は「緩い共闘」にとどまった。
 気仙では5月に発足した後援会気仙支部(林﨑幸正支部長)の市町議や連合気仙、国民民主党の関係市議、共産党議員などの応援を受けたが、「横の連携」は緩く、遊説計画などの戦略も精彩を欠いた。
 全国的な「自民一強」の流れにのみ込まれ、政権与党の候補として組織で攻勢を強める相手の風をはね返せず、現職としての知名度も生かし切れなかった。
 「小沢王国」と呼ばれ、長らく野党の基盤が強かった県政の勢力図は、昨秋の衆院3区の金星に続き自民が勝利を収めたことで、変動が進んでいることが明らかとなり、来年の県知事選や県議選は自民がさらに躍進するか、野党が巻き返せるかの〝天王山の戦い〟となることが見込まれる。
 参政党の新人・白鳥顕志氏(51)=北上市、無所属の新人・大越裕子氏(58)=北上市、NHK党の新人・松田隆嗣氏(48)=北海道札幌市=はそれぞれ独自の戦いを展開したが、実質的な与野党一騎打ちに埋没した。
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 全県の投票率は55・38%で、56・55%だった前回選を1・17ポイント下回った。気仙では、大船渡市が59・86%(前回選比0・10ポイント減)、陸前高田市が61・67%(同0・77ポイント増)、住田町が62・76%(同0・63ポイント減)。
 期日前投票者数は全県で22万6414人(21・84%)で、前回選から3・05ポイント増えた。気仙3市町でも前回選を上回り、大船渡市が5157人(17・26%)で前回選比2・36ポイント増、陸前高田市が3108人(19・30%)で同5・49ポイント増、住田町が916人(20・45%)で同4・68ポイント増だった。

 

岩手選挙区当選者の略歴

 

 ◇広瀬めぐみ(ひろせ・めぐみ)盛岡市出身。盛岡一高、上智大を卒業後、平成11年に司法試験に合格し、同13年に弁護士登録。東京都を拠点に弁護士として21年間、子どもの虐待やいじめをなくす活動、高齢者の財産保全、女性の社会的自立支援などに取り組んできた。盛岡市在住。56歳。