未利用地活用 新たな一手 チョウザメ養殖・レタス水耕栽培を同時展開 アクアポニックス施設完成

▲ チョウザメ養殖とレタスの水耕栽培を同時に行う施設が完成

浄化センター敷地内に

 

 大船渡市大船渡町にある大船渡浄化センターの未利用地に、チョウザメ養殖やレタスの水耕栽培を同時に行う施設「アクアポニックスパークおおふなと」が完成した。同センター包括運営事業の参画企業などによる合弁会社㈱テツゲンメタウォーターアクアアグリ(株屋進社長)が昨年11月から整備。まずは今年10月からのレタス出荷を見込む。未利用地の有効活用や新たな産業創出策として、今後の成果が注目される。(佐藤 壮)

 

 14日に現地で開かれた完成を祝う神事には、合弁会社や施工の各関係者ら約30人が出席。あいさつに立った株屋社長は「アクアポニックスの最先端技術を盛り込んでいる。努力や工夫を重ねておいしいレタスやチョウザメを育て、成功させる」と決意を込めた。
 盛川河口部に位置する浄化センターは、家庭や工場などでの排出水が下水管を通じて集まる終末処理場。計画的な運営に向けて公民連携手法を採用し、特別目的会社である大船渡下水道マネジメント㈱が浄化センターの施設改良付包括運営事業を受託している。
 これまでに既存施設の改良で処理能力の増強を進めた結果、将来的に予定していた処理系列の増設が不要となった。同マネジメント側が、未利用地活用の一環で提案した。
 アクアポニックスは「アクアカルチャー(養殖)」と「ハイドロポニックス(水耕栽培)」を組み合わせ、魚と植物を同じシステムで同時に育てる新しい農法。魚の排泄物を水中のバクテリアが植物の栄養素に分解し、植物はろ過フィルターの役割を果たすことで、浄化された水が魚を育成する水槽に戻る循環システムを形成する。
 運営する合弁会社は、大船渡下水道マネジメントの代表となっている㈱テツゲン=本社・東京都=とメタウォーター㈱=同=に加え、新潟県長岡市でアクアポニックスの実績を持つ㈱プラントフォームで構成。市と借地契約を結んだ。
 現在ある浄化センターの管理棟や水処理施設の西側に、鉄骨造りの温室約2000平方㍍を整備。稚魚育成用を含めたチョウザメ養殖の水槽9基や、縦33〜36㍍で幅6・5㍍のレタス栽培施設4基などが入る。
 施設内では現在、水槽内でチョウザメ飼育に向けた「水づくり」が進む。順調にいけば8月からチョウザメを育て始め、レタスの栽培にも着手。9月下旬には事業開始式を開き、レタス出荷を本格化させる。
 レタスは1日1500株の通年出荷が可能で、年間42㌧を見込む。チョウザメは最大2000匹を飼育し、4年後以降に年間オス400匹(1㌧)、メス300匹(1・8㌧)の流通を計画。メスから取れる卵はキャビアの加工に用いられるほか、身も引き合いが多く、付加価値をつけやすいという。
 雇用は10〜12人程度を見据える。プラントフォームが手がけてきた施設の中では国内最大規模で、魚の飼育量が調節できる設備体制など、これまでの事業で確立した最先端技術が生かされた。
 施設内は水の循環システムが常に稼働し、浄化センターとは独立した運営で、同センターの処理水は入らない。下水道事業は近年、人口減少や技術革新に伴い、当初確保した用地が余る事例が増えているといい、全国的にも未利用地の有効活用策として注目されている。