より良い復興の実現へ 気仙の4人が出席 知事囲み県政懇談会 住田で(別写真あり)

▲ 「気仙の魅力を生かした地域振興」をテーマに、気仙の4人と達増知事が意見を交換

 県政懇談会「いわて幸せ作戦会議in住田」は19日、住田町世田米の同町役場町民ホールで開かれた。今回は東日本大震災後の気仙にUターンや移住をし、各種分野で地域の復興や振興に携わる4人が出席。4人は自身の活動や課題、今後の展望などを示しながら達増拓也知事と意見を交わし、より良い復興の実現や地域づくりのあり方を探った。(三浦佳恵)

 

 いわて幸せ作戦会議は、県内のさまざまな分野で活動する人々から生の声を聞き、県政に反映させようと各地で開催。今回は、東日本大震災の発生から11年4カ月が経過した中、気仙で三陸のより良い復興の実現に向けて取り組む人々から声を聞こうと設定した。
 出席したのは、大船渡市の漁業・中野圭さん(36)と観光ガイド・佐々木イザベルさん(42)、陸前高田市の農業・菊地康智さん(38)、住田町の㈱ベストインクラスプロデューサーズ住田オフィス責任者・伊藤美希子さん(43)。県からは達増知事、政策企画部の小野博部長、沿岸広域振興局の大久保義人副局長が臨み、地元選出の佐々木茂光、千葉盛両県議が傍聴した。
 達増知事は「元々岩手に住んでいる人たちをはじめ、岩手にやって来る人、帰ってくる人にもより良い生活、仕事、学びができる場にしていくため、ぜひとも話を聞きたい」とあいさつ。出席者の自己紹介に続き、「気仙の魅力を生かした地域振興」をテーマに話し合った。
 震災を契機にUターンした中野さんは、故郷の大船渡市三陸町越喜来でホタテやホヤなどを養殖し、漁業を通じた交流事業を行っている。課題にはホタテの貝毒を挙げ、「今は一定の基準を保てば加工用として出荷できるが、指定の加工場を通さなければならず、自分が育てたホタテを食べたいと言ってくれる人に直接提供できない」と、貝毒に対応した加工技術を広げる仕組みづくりを求めた。
 佐々木さんはフランス出身で、令和元年に大船渡市の地域おこし協力隊として同市に移住。現在は起業して観光ガイドを務める傍ら、漁業従事者、空手指導者としても活動している。「大船渡だけでなく、住田や陸前高田にも魅力がいっぱいある。広い地域で地区と地区をつなげた観光プロモーション、コースの開発が必要」と提言し、地元住民に地域の良さを知ってもらう必要性にも触れた。
 千葉県出身で、震災後に祖父母が暮らす陸前高田市に移住した菊地さんはショウガの無農薬栽培に取り組み、「三陸ジンジャー」ブランドを立ち上げて加工品の生産、販路拡大にも注力。知事には既存の枠組みを生かした新規就農者の育成に対する支援充実を要望し、「若い人も農業にいいイメージを持ち、職業の選択肢の一つとして魅力あるものになるのではないか」と述べた。
 神奈川県出身の伊藤さんは震災後、住田町の仮設住宅コミュニティー支援に参加。現在は同町を拠点にマーケティングの仕事を行い、地域課題解決のサポートにも当たる。伊藤さんは住田とのかかわりを振り返り、「よそ者を地域に入れてくれた住田の方々にお返しをしたい。住田の魅力をどう伝えれば、相手に価値あるものになるか、マーケティングの視点から挑戦したい」と力を込めた。
 出席者らはこのほかにも、地域の魅力を知ってもらう取り組み、若い人が1次産業に就業しやすい体制づくりなどを意見。
 達増知事は一人一人の発言に理解を示し、最後に「ほかの地域と比較することで、岩手や気仙には全国トップクラス、世界に通用するほどのものがあると分かる。それを県民、地元の人に知ってもらって働こう、暮らしていこうと思い、全国からも来てもらえるよう、県としても力を入れていきたい」と所感を述べた。
 出席者から寄せられた意見は庁内で共有し、今後の県政に生かしていくとしている。