国際シンポで豪の養殖サケ産業に学ぶ ロス准教授(タスマニア大)ら講話 持続可能な水産業見据え(別写真あり)

▲ 水質管理の重要性を強調したロス准教授

シンポジウムに先立ち、大船渡湾内の視察も

 一般社団法人生態系総合研究所(小松正之代表理事)と大船渡市による「オーストラリアに学ぶ国際シンポジウム」は27日、盛町の市民文化会館リアスホールで開かれた。オーストラリア・タスマニア大学のドナルド・ジェフリー・ロス准教授や、在日大使館のトム・クライネン参事官らが登壇し、養殖サケ産業が盛んなタスマニアでの知見をもとに、水質環境保全の重要性などを解説。県沿岸では主力魚種の不漁や貝毒の影響に悩まされる中、出席者は終始熱心な表情で耳を傾けていた。(佐藤 壮)


 「タスマニアのサケ養殖と海洋生態系」をテーマに、海洋資源の持続可能な管理について学ぼうと開催。市制施行70周年記念事業の一環とともに、オーストラリア政府外務貿易省「豪日交流基金」の助成を受けて行われ、東海新報社などが後援した。
 市内外から約100人が来場。冒頭、戸田公明市長や小松代表理事があいさつに立ち、持続可能な水産振興などにつながる情報発信や交流に期待を込めた。
 ロス准教授は、海洋資源の持続可能な管理を研究領域とし、近年はタスマニア州におけるサケ産業について研究。同州はオーストラリア南部に位置し、サケ養殖に関しては北欧のノルウェーと並ぶ一大産地として知られる。
 講演では、30年以上に及ぶアトランティックサーモン養殖の歴史や水質保全への取り組みを紹介。環境を守るための規制や生態系全体への影響調査などを重視しながら、産業自体も拡大してきた流れを示した。
 近年、本県沿岸では天然サケの資源量が激減し、養殖事業の動きが広がる中、出席者はメモを取りながら聴講。質問時間も設けられ、環境調査の手法などが話題に上った。
 シンポジウムに先立ち、ロス准教授とクライネン参事官は、大船渡湾内を視察。カキ養殖を営む新沼敬司さん(57)=大船渡町=の船で養殖施設や湾奥部、湾港防波堤付近などを巡った。
 ロス准教授は「水産業にとっては、健全な環境と良好な水質が大事で、大船渡湾に入ってくる水を適切に管理することが大切。防波堤や防潮堤が完成したことで、水がこれまでよりも長い時間湾内にとどまる状況も注意する必要がある」と指摘。
 クライネン参事官は「東日本大震災から11年が経過し、政府や地元関係者の力で復興した姿を見ることができた」と話していた。
 28日午後2時からは、リアスホールで「中高生の国際交流オーストラリアってどんなところ?」を開催。ロス准教授とクライネン参事官らが気仙地区の中高生らと懇談し、交流を深める。